第8話 若返り学園長、入学試験を受ける②
試験担当者に案内されながら、ニコライは受験生に混じり学園を見回していた。
(追放されてから三年か……気分的には昨日の出来事のようなものなのだが、ずいぶん懐かしく思えるな)
ニコライは久々の学園内を楽しそうに眺めていた。
(ふぅん、三年も経つが、この辺は変わっていないな。ていうか、もう少し設備に投資しても良いと思うが)
貴族からの献金をたんまりもらっているはずなのに校舎の回収には一銭も使っていないということか? 全てポッケナイナイなのか? そんな様子が見て取れて、ニコライはまたしても暗い顔をしてしまう。
「はぁ……」
「なぁにニコ、もしかして座学苦手なの?」
サラに心配されニコライは笑顔を取り繕う。
「いえ、そういうわけではないのですが」
「なら良かった。にしてもさすが名門、古さに時代を感じるわ」
「ですよね……はぁ……」
「?」
嘆息しながらサラと歩くこと数分、ニコライは講堂に案内されていた。
(気を取り直そう。まずはここで筆記試験だな……ふむ、実に新鮮な眺めだ)
壇上で講義をしたことは数あれど、テストを受けるなんて四半世紀以上昔のことだとニコライはちょっぴりワクワクしていた。
「はじめっ!」
試験官の合図と共に受験生たちは一斉に用紙をめくる。
「ほう」
その試験内容に目を通した後ニコライは軽く眉をひそめた。
(……ふぅむ、なんというか、この問題を作成したのは、おそらくトーマッシュ君かな)
設問の偏りを見抜き、すぐさまこのテストを作った人間を思い浮かべるニコライ。
そして額に手を当てて目を瞑り考え込んでいた。もちろんテストの解答が分からないというワケではない。
(まったく……もう少しフラットな問題を作れと言ったのに、内容がずいぶん偏ってるぞ、彼の趣味満載じゃないか。戦闘や魔石の応用にばっかりに注力して魔力の基礎知識問題が疎かになっている。戦闘ギミック系が好きなのはわかるが、もう少し日常に重きを置いた問題にしないとダメだよ)
注意する人間がいないのか……と嘆くニコライはすぐさま回答欄を全て埋めると、余白の部分に「この問題についてのダメ出し」を事細かに補足を交え書き記した。
(すべての人間が戦闘に携わる職に就くわけではありません。魔法は日常生活に根付いており一般人にこそ理解が必要なものです……っと、つい赤を入れてしまったな)
ギリギリまでトーマッシュの設問配分に対しての改善点、ダメ出しを書き連ねるニコライだった。
※次回は12/16 12:00投稿予定です
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この作品の他にも多数エッセイや
・追放されし老学園長の若返り再教育譚 ~元学園長ですが一生徒として自分が創立した魔法学園に入学します~
・売れない作家の俺がダンジョンで顔も知らない女編集長を助けた結果
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