第2話・レアとネオ

 アルケ家とミスト家の中立地区にある、公園のガゼボで惹かれ合うレアとネオは抱き合ってキスをしていた。


「んんッ……ネオ」

「んッ……レア」

 会うたびに、見つめ合うたびに二人の愛する気持ちは高まっていく。

 互いの体を擦り、愛を確かめ合うアルケ家の令嬢とミスト家の令息。


 絵師が二人の肖像画を描いて後世に残したいと思うほどの、美麗な女性と美形な男性のカップル。

 当然、二人の容姿は庶民の間でも噂になっていた。


 市場を仲むつまじく寄り添って歩く二人の姿に、人々はタメ息を漏らす。

「あの美しさは、この世のモノじゃない」

「ご令嬢の美貌に月は恥ずかしさに雲に隠れ、ご令息の美しい顔立ちに飛んでいた鳥が惑い落ちる」

 そんな噂話しが絶えない二人だったが、どこか憂いを含んだ表情にはかげりがあった。


 草原の小道を並んで歩きながら、レアがネオに言った。

「わたし、時々自分がわからなくなるんです……過去の記憶が霧に包まれていて」

「それは、わたしも同じです……いったい、自分は何者なんだろうと悩む時があります。幼少時代の記憶がない」

「ネオさまもですか? わたしも同じです……わたしたちが、惹かれ合って恋に落ちたのは、同じ記憶欠落の感覚を持っていたからかも知れませんね」


 そんな二人の歩く姿を、巨木の後ろから見つめている四つの目があった。

「アレがアルケ家の令嬢と、ミスト家の令息か……なるほど、噂通りの美貌だな」

「挙式日も決まったそうよ……両家が勝手に許婚にして、結婚させるらしいわ」

 巨木の後ろに立っているのは、キツネの耳を生やした黒い和装の男と赤い和装の女だった。


「あの二人を〝寝取る〟のがオレたちの依頼された仕事……オレは男を」

「あたしは女を〝寝取る〟」

 キツネ耳をした男女は、巨木の後ろからいつの間にかいなくなっていた。


  ◇◇◇◇◇◇


 レアとネオの挙式を数日後に控えたある日──レアは、ミスト家の使いだと名乗る者から、アルケ家とミスト家の領地境界ギリギリにある、廃屋となっている教会に呼び出された。


 レアが天井の一部が抜け落ちた教会に行くと、そこに居たのはネオではなく。

 赤い和装姿の、見知らぬキツネ耳の女だった。

 疑うことを知らないレアが女に問う。

「あなたは誰? ネオはどこ?」

 キツネ耳の女が、舌なめずりをして言った。

「本当に純粋な女だな……おまえが好きなミスト家の男はいないよ。おまえはこれから、あたいに……女に〝寝取られる〟んだ」

「いったい何を言って……女がネトルって?」


 レアがそう言った時、レアが立っている古い教会の床を破って、無数の赤い触手が現れ……レアの体を包み込み拘束した。

 粘液でヌルヌルする触手に手足を巻きつかれ、空中に持ち上げられたレアは悲鳴を発する。

「きゃあぁぁぁ⁉」

 空中でM字開脚の格好にさせられた、美麗令嬢を眺めるキツネ耳女から薄ら笑いが漏れる。


「なかなか、そそられる格好ね……そんな挑発的な格好を見せられたらうずいてきちゃうじゃない……その赤い触手は、魔導と呪法の融合で数年前に誕生した人工生物……それなりの知性を持っている」


 キツネ耳の女は、数年前に誕生して逃げ出して野生化した触手生物は。

 陽の錬金術主体の国と、陰の呪法主体の国で密かに繁殖しているとレアに告げた。


「触手生物には赤い女王系のグループと、黒紫系の王系のグループがいてね……両グループとも交渉済みで、寝取りをする時に協力してくれる……それじゃあ、〝女が女の百合寝取り〟をはじめるか」


 触手の蠢きが激しくなり、レアの衣服の中に侵入を開始した。

 恐怖に悲鳴を発するレア。

「いやぁぁぁぁぁぁ!」

 衣服を剥ぎ取られ、半裸姿になったレアに、上半身裸になったキツネ耳女が迫る。

「もう、諦めろ……おまえは、あたいの女になる……寝取られて、女の百合になる……もう、おまえはあたいから、離れられない」


 粘液で体がヌメるレアの露出させられた胸を触りながら、キツネ耳の女はレアの唇を奪い、レアの体を愛撫した……赤い触手の女王と一緒に。

 レアの腰や脚や背中や臀部でんぶが、蠢く触手の粘液で光沢を放った。


  ◇◇◇◇◇◇


 同時刻──ネオの方も、ミスト家とアルケ家の領地境界ギリギリにある、牧草の納屋でキツネ耳で黒衣和装のの男と、黒紫の太い触手王の責めを受けていた。


 触手に巻きつかれ、胸や腰をあらわの半裸

姿に黒い和装のキツネ耳男は興奮する。

 牧草の中から伸びてきた管のような触手に口をふさがれた、ネオの呻き声が聞こえてきた。

「うぐぐぐぐッ……ごえッ」

 キツネ耳の男が、和装の上半身をはだけさせてネオに近づく。

「美形な男の喘ぐ声は、いつ聞いてもいいものだ……おまえは、オレに寝取られて、男同士で薔薇ばらになる」


 キツネ耳の男は口が触手でふさがれた、ネオの顎を指先で上げさせる。

 ネオの唇の端から、触手が流した透過光の液体が顎先に垂れているのが確認できた。

 キュポッと口に入っていた触手が抜けて、黒衣のキツネ耳男がネオの唇を奪う。

「んッ……んんッ」


 唇を離したキツネ耳男が、恍惚とした表情のネオの目を見つめながら囁く。

「これで、おまえは男のオレに〝寝取られて〟オレの男になった……今は自己紹介だけしておこう、オレの名前は『黒狐こくこ』……相棒のキツネ耳女の名前は『赤狐せきこ』だ……あいつは、自分の名前を女に名乗らないだろからな」


 再び黒狐はネオの唇を奪い、黒紫色の触手王と一緒にネオの下半身と上半身を責めて、美形令息を薔薇ばらに落としていった。

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