第4話 悪役王子、ビ◯ムサーベルを作る






 婚約者。将来結婚する相手。


 それを選ぶため、今度王城で開かれるパーティーへ出席しろと父が言う。



「嫌です、父上。絶対に嫌です」


「な、何故そこまで嫌がるのだ。そなたももう十歳、婚約者がいて然るべき歳じゃろうて」


「嫌なものは嫌です」



 俺は父の執務室を訪れ、断固として婚約は嫌だと駄々を捏ねた。



「たしかに俺が第一王子、あるいは第二王子だったならば結婚して子を作るのが義務でしょう。しかし、俺は第三王子です」


「う、うむ、そうじゃな」


「だったら独身でもいいじゃない!! アタイはそう思うわけよ!!」


「そなた、少し見ぬ間に性格が変わったか?」



 おっと、いかんいかん。


 つい興奮しすぎて国王に変なものを見るような目を向けられてしまった。



「とにかく、俺は結婚などしたくないです」



 一応、誰にも話せはしないが、結婚したくない理由だってある。


 俺はいずれ破滅する立場なのだ。


 その俺と結婚などしたら、その相手の女の子にも迷惑をかけてしまう。


 実際、ゲームのエインスと結婚したとあるキャラクターは反逆者の妻として民衆から石を投げられたりと、酷い目に遭うからな。


 主人公が民衆を説得して妻の一人に迎えなかったらより悲惨な末路を辿っていたはずだ。


 それなら、最初から婚約しなければいい。


 第三王子という立場なら、それがギリギリ許されるはず。


 すると、父改め国王は――



「むぅ、分かった。そこまでそなたが婚約者を要らぬと申すのであれば無理に選べとは言わぬ」


「おお!! 本当ですか!!」


「うむ。じゃが、そういう名目で開いた以上はそなたの不参加を許可することはできぬ」



 む。まあ、それは当然か。



「故に今回だけはパーティーに出席せよ」


「分かりました。交渉成立ですね!!」



 俺は自室へと戻り、結婚しなくて済むことに歓喜した。


 一生独り身、万々歳。


 すると、何やら俺がニヤニヤしている理由が気になったらしいアイラが話しかけてくる。



「何を笑っておられるのです? 不気味ですよ」


「本当に俺に辛辣だよね、アイラは。……父上に直訴したら、無理に婚約者を選ぶ必要はないって言われたんだ」


「エインス様は、独り身でおられるつもりなのですか?」


「うん、そうだよ」



 俺は前世でも独身だった。


 しかし、頻繁にヒステリックを起こす女と結婚してしまった友人の愚痴を聞いていたせいだろうか。


 正直、結婚というものに苦手意識がある。


 いやまあ、人から聞いた話で結婚というものを忌避するのもどうかと思うが、俺は昔からそういう性分なのだ。


 エッチなことがしたくなったらそういうお店に行けばいいだけだろうしね。



「……そう、ですか。では、私は一生エインス様のお世話をせねばならないということですね。面倒です」


「ねぇ、そこまで俺のこと嫌い? さすがに傷つくよ? 俺の心って意外とデリケートなんだぞ?」


「冗談です。私はエインス様のお側にいられて嬉しいですよ」



 どこまで本音でどこまで建前なのか、アイラは相変わらず無表情のまま言った。



「それはそうと、エインス様。先ほど騎士団長が探していましたよ」


「え? あー、そう言えば最近はずっと剣術の訓練サボってるからなあ」



 俺は第三王子だが、それでも王子だ。


 王子として学ぶことは多いし、剣術の訓練や魔法の訓練もせねばならない。


 でも面倒なので全部すっぽかしている。


 残りの人生が短い俺にとって、剣や魔法など二の次だ。


 今は生活を改善すべきだ。


 じゃないとストレスで死ぬ。ストレスに剣と魔法で抗えるか? 答えはノーだと言ってやろう。



「万が一のこともあります。いざという時、己の身を守れるのは己だけ。私は訓練すべきだと思いますが」


「正論はやめたまえ。でもアイラがそこまで言うなら考えとく」


「それはよかったです。エインス様なら、いずれ剣聖と呼ばれる騎士団長にも届くかもしれませんよ」



 俺は少し考えてから、結論を出す。



「やっぱしんどいの無理だからパスで」


「少しでも励ました私が愚かでした」



 アイラが溜め息混じりに言う。


 しかし、魔王に身体を乗っ取られてしまうのは防ぎようがないからなあ。


 辺境に幽閉されてから死ぬ理由も病だし、武力を磨いたところであまり意味はない。


 ……でも、そうだな。



「アイラ、ちょっと待っててくれ」


「エインス様? どうなさいました?」


「いいからいいから」



 俺はまずクラフトスキルの『造形』で剣の柄を作った。


 強度に不安があるので『付与』で頑丈にし、更にとある機能を与える。



「アイラ。これをお前にプレゼントしよう」


「……剣の柄ですか。何の意味があるのです?」


「柄の底の部分にあるスイッチを押してみてくれ」


「ふむ、これですか?」



 カチッとスイッチを押した瞬間。


 アイラの握っていた柄からピンク色の光が伸びて剣の形を作った。


 アイラが無表情のまま目を瞬かせる。



「これは?」


「ビ◯ムサーベル。ミノ◯スキー粒子じゃないけど、人体なら余裕で貫通するから扱いには気を付けてね」



 アイラは最終的にエインスを操っていた魔王にトドメを刺すキャラだ。


 しかし、主人公に対する好感度が低いままだと、その際に命を落としてしまう分岐ルートに突入する。


 そうならないよう、特殊な剣をプレゼントした。


 何気にアイラは俺の好きなヒロインだし、死んでほしくないからな。



「まあ、もらえるものはもらっておきます」



 そう言ってアイラは柄の底にあるスイッチをもう一度押し、サーベルの部分を収めた。


 それをスカートの中に仕舞って――



「ちょ、今どこに仕舞ったの!?」


「メイドのスカートの中には色々入っているんですよ?」


「え、えぇー」



 知らなかった。


 メイドのスカートの中は四次元ポケットだったのか。


 ……いいな、四次元ポケット。


 ビーム◯ーベルも作れたし、そういう架空の道具を作るのもいいかもしれない。


 時間と材料があったらモビ◯スーツも……って、それは流石に無理か。







 そうこうして、パーティーの日がやってきた。







―――――――――――――――――――――

あとがき

ワンポイント小話


作者「作者はズ◯ックが好き」


エ「俺はリ◯クディアス」



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