第2章 帝国の事情
第20話 それから
俺たちが
最初の街【ファスタ】を拠点として準備を行った。
俺の目的はダンジョン攻略で得たリソースをリリーに戻すことと、〝呪いの魔王〟の復活阻止。
リリー曰く俺が〝手加減〟しなければ〝呪いの魔王〟の討伐自体は問題ないらしい。
しかし復活することによって起る弊害の方が問題なのだとか。
まず一つ目に魔物が一気に活性化する可能性が高いこと。
これは〝祝福の魔王〟であれば問題無かったのだが、〝呪いの魔王〟の場合、その呪詛が世界を覆いつくし、魔素が暴走。
結果として魔物が活性化するとのことだった。
しかもそれによってダンジョンも活性化してしまい、攻略どころではなくなるのだとか。
ダンジョン攻略が遅れるということはリリーのリソース回復も遅れる。
つまり詰みの状態になってしまう。
というわけで俺たちは【ファスタ】周辺の野良ダンジョンを攻略して回っている。
通称野良ダンジョンと呼ばれているダンジョンは、正確にはメインダンジョンの株分けされたダンジョンの事を指すらしい。
この世界ではまだそのことについて解明されていないが、元魔王国四天王は知っているそうだ。
俺もリリーから聞かなければ分からないことだったが、メインダンジョンのプログラムが魔素の蓄積限界を確認すると、ダンジョンコアを生み出して近くに放出するそうだ。
そしてあらかた大きく育ったダンジョンは元魔王国四天王の手によってメインダンジョンへ作り変えられるのだとか。
こうして説明を受けなければ、ダンジョンは自然発生しているものだと思ってしまっても間違いではない気がした。
そこで俺たちはメインダンジョンの攻略ではなく、野良ダンジョンのリソースを回収して回っているというわけだ。
特にあの森の中には野良ダンジョンが多数存在しており、
つまり、回収し放題というわけだ。
そんなダンジョン攻略の帰り道、ついにこのテンプレがやってきた。
そう、馬車の襲撃だ。
少し時間はさかのぼるが、俺たちがダンジョン攻略を終えて森から出ようとした時だった。
いつもだったら魔物の気配がするはずなのに、それが一向になかったのだ。
むしろ血の匂いが行く手を包んでいた。
魔物の血の匂いではなく、鉄さび臭い血の匂い。
「リリー、リル!!警戒態勢で進む!!」
「主殿……この先に複数の血の匂いがある。魔物以外の……」
さすがはフェンリルといったところだろうか。
俺でもなんとなく感じた程度だったのに、リルは正確に感じ取っていた。
それから警戒しながら先に進むと、一台の馬車とそれを囲む数名の護衛騎士。
そしてそれを襲っているのは……
だがどうして。
なんて疑問もわいてくるが、一応護衛任務もあるから盗賊相手はするだろうな。
だが目の前の光景は明らかに違った。
どう見ても
「リリーはどう見る?」
「あの
なるほどね、神聖国【ルミナリア】に見せかけた第3国の手勢の可能性か。
また面倒なことをするものだな。
だがこうして手をこまねいていても仕方がない。
乗りかかった船だ、助けることにする。
「リル、先生を任せる。狙いは
「心得た、主殿。では行ってくる!!」
リルは手甲を気に入ったようで、ダンジョンで見つけた素材をベースにオリジナルの武器を制作していた。
フレイムウルフの牙と毛皮を素材として火属性手甲【炎狼】と、アイスドラゴンモドキの牙と皮を素材にした氷属性手甲【氷牙】。
二つの手甲を打ち鳴らしながら、獰猛な笑みを浮かべて突進していった。
「リリー、あの馬車と護衛騎士のガードを頼む!!」
「任せなさいって!!【フィールドプロテクト】!!」
リリーは無詠唱で魔法を発動させる。
「な、なんだこれは⁈」
いきなり自分の攻撃がはじかれたことに驚いた様子の
それと同様に、攻撃が来ないことに戸惑いを隠せない護衛騎士たち。
まあ、いきなり透明な壁のようなものが出来ればそうなるよなって思ってしまう。
ちなみに、本来であれば魔導を発動させた方が良いのだが、あえて下位の魔法を選択したようだ。
まあ、あくまでも人に見られているからってだけなんだけど。
このご時世、魔導を使用すればいろいろと勘繰られる可能性が高すぎるからという、リリーの配慮だったりする。
「悪党ども!!我が拳にひれ伏すがいい!!」
リルはその膂力を活かし、一気に
いきなりの横やりで対応の遅れた
上空からリルが振り下ろした拳が、
あ、これあかんやつだ。
完全につぶれてる……南無さん!!
「フォローするわ!!それと、【ヒールライト】!!」
リリーも
これで護衛騎士たちとその護衛対象の安全は確保されたわけだな。
それじゃあひと暴れと行きますか。
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