第21話 姫様との邂逅
「リル!!スイッチ!!」
「任せた主殿!!」
リルが一人蹴散らしたおかげで、地面がグロテスクになっていたが、そのせいもあり
それを俺たちが見逃すはずはなく、リルに注目が集まったところで今度は俺が割って入った。
俺は突進しながら左脇に構えたブロードソードを、一気に横へ振り切る。
二人目の
「くそ!!奇襲だ!!迎撃態勢!!」
このタイミングでようやく自分たちが奇襲を受けていることに気が付いた
だがすでに俺たちの勢いの方が彼らを上回った。
それもそのはずで、リリーの回復のおかげで傷の癒えた護衛騎士たちも戦いに参戦しだした。
数的有利から一転、数的不利に陥った
リルの猛攻も止まらず、あっという間に
結果、ものの数分で10人以上はいたであろう
「助太刀感謝する。君たちが助けてくれなければ、我々はこうして生きてはいなかっただろう。」
そう言って兜を脱いだ騎士は人狼族の男性だった。
青味がかった銀髪に碧眼。
そして何より、左目に大きな傷がついていた。
その騎士の言葉を皮切りに、5名の騎士も兜を取り頭を避けていた。
種族は多種多様で、人族は一人もいなかった。
やはりここでは人族はあまりいないのだろうか。
だからこそ余計にこの
「私からも感謝申し上げます。」
馬車の方を見ると、3名が姿を現した。
一人は執事服がとてもに合う、巻角を生やした高齢の男性。
その男性にエスコートされるように降り立った、ドレス姿の女性。
こちらはふわっとした尻尾が特徴的で、頭には犬耳が付いていた。
彼女は犬人族らしいな。
そして最後にメイド服を身に纏った女性。
どちらかと言うと俺はこの女性に目を奪われた。
取り立てて美しいわけではなかったが、その纏う空気感がメイドとは思えなかった。
むしろSPだと言われた方が納得できそうだった。
おそらく彼女はそう言った役割なんだと思う。
どうしても男性だと付いて行けない場所というのが存在しているから。
猫人族のメイドも俺の視線に気が付いたようで、何やら見定められているようだった。
まあ、それが仕事だから仕方ないのかもしれないが。
「いえ、俺たちも帰りの途中でしたので。それに誰かが襲われているのを助けることに理由はいりませんから。」
俺は犬人族の女性に対し、失礼が無いようにかつかしこまり過ぎないように答えた。
その女性も不快感はなかったようで、軽く一礼を返してくれた。
「この度は姫をお救い下さり、誠に感謝に堪えません。私からも礼を言わせてください。」
今度は執事の男性から深く頭を下げられた。
リリーから教えてもらったことだが、巻角を付けたものは十中八九魔人族だということだ。
魔王国時代から魔導を受け継ぎ、今世に伝えている存在。
だが、魔王が敗れてから時がたち、魔導はその形だけを残し衰退していっているらしい。
だがその魔力自体は健在で、魔法を使わせたら右に出る者はいないとまで言われるものも多数残っているそうだ。
となればおかしいとも思えてくる。
この執事とメイドが本気を出せば問題なく退けられたのではないかと。
「これはこれは……。あなた様の考えはなんとなくですが分かります。ですが私とこの者が姫から距離を開けてしまえば、敵に付け入るスキを与えてしまいます。ですがそろそろそうも言っていられなくなりつつあるところに、あなた様が助けに入ってくださったのです。」
なるほど、そう言われてしまえば反論のしようがないな。
多分俺たちの助けは不要だったかもしれない。
だがそれは護衛騎士たちの命がなくなっていたということに他ならない。
ならば今回助けに入ったことは結果として正解だったようだ。
それにここを退けたとしても、護衛騎士がいない、または満身創痍の状態で第2波の襲撃を受けたとして撃退が出来るかどうか怪しいところだ。
「これは失礼しました。どうも顔に出てしまっていたようですね。」
「いえいえ、我々は助けられた身。ここで嫌味の1つでも出そうものなら、品格を疑われかねません。」
そう言っておおらかに笑う執事の男性。
うん、なんともつかみどころのない人だな。
「主殿、ところでこの者たちはどうするのだ?」
護衛騎士たちが縛り付けた3名の
そのどれもが人族の
死体となった
いったい何が起ったのかは俺には分からない。
だが言えることは、おそらく面倒ごとだということだ。
「そうだね、ここはこの方たちに任せよう。俺たちが出しゃばったところで碌なことにならないからね。」
そう言って姫様に視線を送ると、少し困ったような表情を浮かべていた。
襲撃そのものに心当たりはある物の、どう対応していいか困惑しているという感じだった。
「ぶしつけな頼みを聞いてもらえるだろうか。」
人狼族の騎士がそう言って俺に近づいてきた。
大方予想は付くんだが……
「頼みとは?」
「この3人を証人として街まで連行したい。しかし第2第3の刺客が送られてきた場合、対処しきれない。そこで君たちに護衛を頼みたいのだ。」
だろうと思った。
同じ町に戻る途中だったので、俺たちはそのまま姫様たちの護衛に付くことにした。
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