第10話 ついにこの時が来た!!
扉の先に進むと、そこには幻想的な空間が広がっていた……
ってはならなかった。
なんていうか、システマチック?な感じがした。
おそらく部屋の広さは50m四方だろうか、狭くなく広くなく……そんな感じだ。
そこの中央には紫色に輝く球体が、台座の上に浮かんでいた。
そこから何かよく分からない靄状のものがふわふわと出たり入ったりしている。
その台座にはいくつのも管が付いており、それがそのまま地面に繋がっていた。
さらにその台座にはディスプレイやキーボード、その他各種スイッチが付いており、どう見てもこれ管理者いるでしょ?って感じがしてならなかった。
「リリー、一応確認だけどさ、ここって無人なんだよな?」
「そうね、普段は無人よ?あとはダンジョンマスターが出入りしているくらいかしら。ただここは放置されてから大分たっているんじゃないかしら?ここ最近手入れがされた気配がないから。」
確かに言われてみれば、埃のようなものが機械の上に蓄積していた。
おそらく管理しなくても問題ないと判断されたのか、完全に放置されたのかどっちかだと思う。
「リルはここの管理者を知っているのか?」
「うむ、ここの管理者は魔王様だ。だが、先の戦いで敗れ現在の管理者は代行の四天王になっていたが……誰もこなんだ……。」
そう言うとリルは少しだけしょんぼりとした表情を見せた。
つまり完全放置されたってわけか……それでも律儀にここを護っていたリルって……けなげすぎるだろ。
そりゃ、寂しくもなるってもんだよな。
まあ、それはそうと、これからどうしたらいいんだ?
このコアを壊せばいいんだろうか?
「それじゃあ陸人、あのコアに触れてちょうだい。そうしたら私が陸人の身体を通してリソースを吸収するから。」
「え?ちょっと待って、それって俺の身体大丈夫……って、あぁ、それで〝丈夫な身体〟ってわけか。」
なるほど、ここでも〝丈夫な身体〟が生きてくるわけか。
確かにこれのおかげでいろいろとケガなどすることなく此処まで来たわけだしな。
「え?関係ないわよ?そもそも人間に吸収されるようなものじゃないから、ただ通り抜けてお終……い……」
っておい、リリー。
どうして顔を背けるんだ?
ちょっとこっちを見なさい。
俺はリリーの顔を無理やりつかむと俺と目の合う位置まで移動させる。
いやよとばかりにじたばたと暴れるリリーだったが、観念したかのように深くため息をついた。
「これは仮定の話よ?今陸人って種族が半神になっているでしょ?もしかしたら……万が一……影響が出かねないかなって……」
それを聞いたリルは平伏するように地面へとひれ伏した。
え?なんでそうなるの?今そのタイミング?
「こ、これは我が主が半神様だとはつゆ知らず、無礼極まり無い所業、平に平に謝罪いたします!!」
あぁ~そう言えばリルに言い忘れてたな。
いや、むしろ俺自身忘れていたな。
うん、これは俺の失態だ。
「リル、頭を上げてくれ。俺は俺だ。確かに種族は半神になってしまったけど、心はまだ人間だから、そうされると俺が悲しくなる。人間を辞めちまったって……」
俺の言葉にしぶしぶ納得したように、リルが立ち上がった。
そしてお座り状態で軽く頭を下げていた。
ヤバイ、めっちゃモフリたい!!
「申し訳ありません主殿。半神様と聞き取り乱してしまいました。」
少ししょげた様子のリルだったが、理解は示してくれたらしいので少し安心した。
それよりもだ、半神になった弊害がもしかしたら出るとかマジで怖いんですが……
「あ、あくまで仮定の話だからね?」
「で、その仮定がヒットする確率は?」
リリーはそっと手を挙げて6の数字を現した。
何だ6%くらいだったら平気じゃないか。
まあ、何かあれば〝丈夫な身体〟が良い仕事をしてくれるに違いない!!
「陸人……6割……」
ですよねぇ~~~~~~~!!
知ってた!!
多分そうじゃないかと思ってたよ!!
なんて顔に表すわけにもいかない。
何せこれをしないことにはリリーのリソースが溜まらないから、俺のスキルもつけてもらえない。
こればっかりは行き当たりばったりでも仕方がないか……
「リリー大丈夫だ。ダメそうだったら止めてくれ。その時考えよう。」
俺はそう言ってダンジョンコアに手をかける。
するとダンジョンコアは紫の光から赤の光へと変わっていく。
『警告……警告……コアへの浸食を確認……エラー……メイン防御プログラム起動確認できません……サブプログラムの起動を開始……エラー……再度実行……エラー……再度実行……』
なんかいきなり警報音が鳴ったと思ったら、警告メッセージが現れたん。
「リリー!!これはいったいなんだよ!!」
「大丈夫よ、問題ないわ。とりあえず回収しちゃうわね。」
そう言うとリリーは焦った様子すら見せずに、俺の左胸に手を当てる。
するとさっきまで大音量で流れていた警報音が徐々に静かになっていった。
それからしばらくすると、完全に音は止み、警告メッセージも見えなくなった。
「うん、これで大丈夫。それじゃあ念願の〝手加減〟を付与するわね。」
これで俺も普通に生活が出来る。
俺はほっと胸をなでおろしたのだった。
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