第11話 ついに来た!!
「うわ!!眩しい!!」
俺はダンジョンコアがあった部屋に設置されていた転移陣を使って地上に戻ってきた。
それと同時にダンジョンの入り口はただの木の洞にもどっていた。
又は入れるのかなと思って手を伸ばしてみたけど、そこには何もなかった。
まあ、ダンジョンもお役御免になったって感じかな。
「そう言えばリルの住処なくなっちまったな。」
「問題ありません主殿。我はあの場所の守護者ではありましたが、ただ契約により縛られていたにしかすぎませぬ。」
そう言うと俺の目の前の美少女がゆっくりと頭を下げる。
うん、なんで美少女が頭を下げたかって?
ダンジョンを出るときにリルがこのまま地上に出たらまずいのではと言う話になった。
確かにこれだけの大型魔獣が街中を闊歩するのは問題があり過ぎる。
そこでリルに聞いたところ、人化が可能だということになり、今後は人化してほしいと頼んだ。
で、その人化した後に現れたのがこの美少女だってわけだ。
銀髪碧眼で、なぜか現代日本で見たことがありそうな白系統のロり服とでもいえばいいのか、フリフリが沢山ついた衣装を身に纏っていた。
なんでそんな服を着ているのか聞いたところ、俺とのリンクが出来ており、そこから記憶を遡ってこの衣装になったらしい。
うん、可愛いから許す!!
そんなことよりも……実験してみないことには始まらないな。
「リリー、大丈夫なんだよな?」
「そうね、うまく働いてくれるとは思うわ。」
そう、ついに念願の〝手加減〟のスキルが手にはいった。
しかもこのスキル、リソース消費がものすごく少ない物だったらしい。
付与したリリーもだいぶリソースが余ったことでほくほく顔になっていた。
俺は意を決してその場で強く足に力を入れてみた。
前であればこれだけで地面が抉れたのだが……なんと普通に足が前に出せた。
それらさらに一歩、一歩と歩く。
俺は徐々の入れる力を増やし、最後は普通に走ることが出来た。
もちろん木に手をかけても折れることは無かった。
石を握っても……ってわけにはいかないらしい。
全力を出すと、さすがに粉々になってしまった。
このスキルを発動した状態であれば、8割くらいの力だと砕けることは無かった。
これでやっと街に行くことが出来る。
人をトマトみたいに潰すことはなくなったようだ。
「ところで陸人、〝手加減〟のスキルは何割まで制御しているの?」
「え、あぁ~、えっと0.01割……」
そう、俺はここまで手加減しないといけない程になっていた。
それを気いたリリーはもう考えることを放棄したのか、『まあ、陸人だしね』で話を終わらせてしまった。
リルはむしろ尊敬の念が強まったとばかりに、キラキラと輝かせた瞳で俺を見つめていた。
うん、でも何はともあれ、これで街に入る事が出来そうで何よりだ。
「やっと街道が見えたか……」
「このままさらに北に進めば大きな都市があるわ。その前に何か所か村があるから、そこを寄った方がよさそうね。」
リリーの情報を基に、今後の予定を決めていく。
今俺たちがいる街道は、森をぐるっと囲むように設置されたものだ。
それを起点に今は各国が貿易だったり交流だったらしているらしい。
この辺もリリー情報だから、まあ間違いはないはず。
ただ俺たちが目指している場所は大陸北側に広がる元魔王国。
しかも元四天王による分割統治がなされているから、さらに小さな国があるってイメージだろうな。
その辺リリーに聞いても、あまり詳しく教えてもらえなかった。
理由は余り教え過ぎても面白くなくなるでしょうとのことだった。
まあ確かに攻略本片手にやるRPGは味気なかったからな。
そう思えば、リリーなりの配慮なんだろうな。
それから俺たちは街道を少しだけ西に移動し、さらに北上する大街道に向かった。
途中何度か魔物の襲撃に合ったが、リルが瞬殺してしまった。
一応森の中で何匹か魔獣を倒し方ら、〝手加減〟が聞いていることの確認は問題無かった。
それよりもリルの変貌ぶりがやばかった。
戦闘形態だと言って手足だけ魔獣かさせていた。
しかもその時だけ、ふわふわの耳と尻尾を垂れさせるんだからある意味反則じゃなかろうか。
これでモフッたら、俺はヘンタイ確定案件だろうな……我慢我慢……
「主殿。このような雑魚相手は我にお任せください。主殿に指一本触れさせませぬ!!」
ぐっと握ったモフモフハンドは本当にヤバいな。
それに、フンスと意気込みを新たにしているリルは、その容姿と相まってなんとも愛らしい……
如何!!俺はそっち趣味じゃない!!
なんてどうでもいいことを考えながら、俺の旅は始まったのだった。
——————
「何?ダンジョンが一つつぶれただと?」
「はっ!!死の森最深部にあります、不帰のダンジョンが機能停止した模様です!!」
執務室と思われる部屋で一人の男性が部下からの報告を受けていた。
男性は青い長髪を軽くかき上げると、その頭部には2本の角が生えていた。
そしてうっすらとほほに見えるのはうろこ状の皮膚だった。
赤々と燃えるような瞳で、じろりと部下を睨みつけた男性は、軽く息を吐くとゆっくりと立ち上がる。
「まぁ、問題無かろう……あそこはすでに管理を放棄したダンジョン。確か……フェンリルが守護していたな。あやつは先代魔王にしか懐かんかった魔獣……我々の手に負えん。それを討伐したものがおるのならば感謝を伝えねばなるまいな。まあ、その首は刈り取るがな。」
ニヤリと笑みを浮かべた男性は、窓の外から見える景色を眺めていた。
そして部下を下がらせると、くつくつと笑い出す。
彼が何を思って笑ったかは誰にも分からなかった。
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