第4話 ルール説明
三好は服装が変わっていることに気付いた。
白シャツに麻のズボンでブーツを履き、腰には鞘入りの剣を吊るしている。
「コスプレだ……」
『プレーヤーは職業に合わせた衣装が支給されます。あなたの場合は冒険者ですね』
「なるほど」
三好はゲーム開始前に数字を宣言したことを思い出した。
そこで鷹田から冒険者に決定したと伝えられたのだ。
(数字で職業とスタート地点が決まったんだろうな)
推測しつつ、三好は剣を引き抜く。
剣はクッションのような柔らかい素材で出来ていた。
切れ味どころか全力で叩かれても痛くないだろう。
三好が剣のディテールに注目していると、武器のデータがポップアップ表示された。
【ショートソード】
攻撃力5。
初心者用の剣。
特殊な力はないが扱いやすい。
三好が視線を外すと、剣のデータ表示は消える。
彼がVR技術に感心していると、アテナが補足説明を加えた。
『すべてのアイテムは内蔵のチップで識別しています。物理的な殺傷能力はありませんが、ゲーム上は攻撃力が設定されています。武器の場合はNPCや他のプレーヤーのHPを減らすことができます』
「俺以外にもプレーヤーがいるんですね」
『はい。この島であなたと同じく目を覚ました頃でしょう』
「プレーヤーの数は?」
『秘匿情報なので答えられませんが、島にいる人間のうち九割以上がNPCです。VR技術で実在しているかのように演出していますが、実際は触れることができません』
アテナの回答に三好は驚く。
彼は思わず酒場の客を一人ずつ確認したが、誰もNPCとは思えなかった。
(九割以上……この場にいる人間はほとんどNPCか。まったく見分けが付かないぞ)
三好は近くにいた客に近付く。
指が触れる寸前、アテナが警告した。
『NPCにも感情があります。迂闊な行動で反感を買えば、戦闘になる恐れもあるのでご注意ください』
三好はすぐに手を引っ込める。
酒を飲んでいたその客は首を傾げた後、何事もなかったかのようにそっぽを向いた。
室内の端に寄った三好はアテナに質問する。
「NPCとの戦闘方法を教えてください」
『承知しました。NPCに通用するのは、ゲームシステムに則った攻撃のみです。あなたの現在の所持品の中ではショートソードが該当します』
「これで殴りまくれば倒せるってこと?」
『ええ、その通りです。試してみますか?』
「やめておきます。どうせ勝てないし」
『賢明な判断です』
三好は周りの容姿を観察する。
全体的に大柄な男ばかりで、剣やナイフ、斧といった武器を携帯していた。
運動不足のフリーターで、格闘技経験のない三好ではまず敵わない相手だろう。
(戦うにしても、装備を整えてからだな。このゲームがよくあるRPGなら、いずれNPCよりは強くなれるはずだ)
今すぐ戦ってみたいという好奇心を抑え、三好は剣を鞘に戻す。
『無数のNPCとそれらに紛れ込むプレーヤー。互いに競いながら賞金を獲得するのがトゥルー・ライフ・クエストです。いかがでしょうか?』
「いいよ、面白い。これで金も貰えるんだから最高ですよ」
『それは何よりです』
会話を終えた三好は酒場を出た。
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トゥルー・ライフ・クエスト ~超高額バイトに応募したら絶海の孤島でデスゲームに参加することになりました~ 結城からく @yuishilo
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