第6話:始まる初任務
「お前に与える任務、それは商隊を襲う盗賊団の調査だ。」
任務の内容がボスであるソフィアから告げられる。
「最近、各地で商隊を襲う盗賊団が現れている。その活動がただの盗みではない、何か目的があると見ている。」
商隊の襲撃自体は珍しくない。しかし、ただの略奪ではないという事実が僕の心に疑念を生じさせた。何が目的で、誰が背後で動いているのか。
「私は遺物が絡んでいると見ている。」
その言葉にドキリとする。ルナティカの遺物の存在は、歴史に詳しい僕でさえ知らないほど、知る者が限られている。たかが盗賊が知っているわけがない。
「お前の考える通りだ。この件、背後に何かしらの大きな存在がいる可能性が高い。」
遺物のことを知る者。どのようにして知ったのか。遺物を使い何を企んでいるのか。様々な疑問が頭から湧き出てくる。
「お前の任務は、盗賊団の動きを追い、どこで何を探しているのかを突き止めること
だ。」
この任務はただの調査ではない。この裏には何か大きな陰謀が隠されている――そんな気がした。
「詳細はエリシアから聞け。準備が出来次第、すぐに行動を始めろ。」
彼女は遺物に関係するかもしれない重要な任務を任せてくれた。この期待に応えないわけにはいかない。
「わかりました。」
そして絶対に成功させるという決意を込めて宣言する。
「必ず完遂してみせます。」
彼女は一度驚いたように目を丸め、期待の眼差しを向けてきた。
♦
ソフィアと幹部たちに見送られ会議室を退出した僕は、あてがわれた自分の部屋でエリシアと向き合っていた。これからの作戦を練るためだ。
この任務はただの盗賊団の調査ではない。その背後にいるであろう何者か、その正体を少しでも突き止める必要がある。
エリシアは資料を静かに広げ、情報を整理していく。
「襲撃は、毎回異なる地点で行われており、襲われている商隊もバラバラです。一見、共通するところは見られません。しかし、一つだけ共通している点があります。」
「単なる物資の略奪を目的とした襲撃ではない、という点だな。」
「はい、その通りです。」
エリシアが頷く。
「この件は遺物が関わっていることが予想されますが、相手の出方がわからない以上、慎重に進める必要がありそうです。」
古代文明ルナティカの遺物――それが一体どのようなものなのかが分かれば、相手の目的もわかるかもしれない。
そう考え、思い切ってエリシアに聞いてみる。
「遺物とは、一体どのようなものなんだ?」
エリシアは、その言葉に考えるように少し俯く。数秒の時間がたつと、言葉を選ぶように慎重に話し始める。
「ルナティカの遺物。古代の超技術が用いられたものですが、それ以外には具体的な情報は多くありません。その存在は、人々の生活が格段に向上するような便利な道具かもしれないし、はたまた、戦い方を一変させるような兵器かもしれない。他にも、いくつ存在するのか、どこに存在するのか、ほとんどが謎のままなのです。」
やはり分からないことが多すぎる。ボスである彼女―ソフィアや幹部たちならば知っていることがまだあるかもしれない。だが、この前の彼女の様子からして、深く踏み込もうとしても教えてはくれないだろう。
「何を目的に求められているのかはわかっていませんが、何らかの形で盗賊団が情報を掴んでいるのは確かです。」
ルナティカの遺物が絡むとなれば、ただの盗賊団の略奪では済まされない。誰かが背後で巧妙に仕組んでいる可能性が高い。僕がその謎を解き明かさなければならない。
「これまでの襲撃について関連性を調査しつつ、盗賊団の動向を把握することに努めます。裏には何か大きなものが潜んでいる可能性が高いです。慎重に行動していきましょう。」
エリシアの言葉にはっとする。そうだ、焦ってはいけない。失敗は許されないのだ。慎重に、かつ迅速に進めていく必要がある。
頬を両手で叩き、気合を入れる。
「よし、準備が出来次第、行動を開始しよう。」
「かしこまりました。急ぎ準備を始めます。」
エリシアがいつもの笑みで応えてくれた。
かくして僕の初めての任務が始まるのだった――――
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