1日目③
「まずは自己紹介か。私は明里灯火。三宅から私の事をどう聞いているか知らないが、私はただの学者だ。それを頭に入れておいてくれ」
「・・・あ、はい。わ、私、
「あぁ、固くならなくていい。緊張していたら、話せるものも話せない」
「あ、はい。・・・すいません」
「で、用件はなんだ?」
「あ、えっと。・・・三宅先生からは、何も聞かれていないんですか?」
「あぁ。聞いていない。だから前情報による先入観は無いから安心してくれ。君の事だ。君から聞くのが一番だ」
「あ、・・・はい」
「それに、言い方は失礼かもしれないが、私の元にまで来た話だ。まともなわけがないだろう?」
「・・・その、通りです」
「まずは、順を追って話してくれ。ゆっくりで構わない。具体的にだ」
「・・・わ、分かりました」
「・・・」
「一週間前、・・・仲が良かった私の姉が、自殺しました。・・・飛び降り自殺です」
「それは、お気の毒に・・・」
「そ、その日から、・・・夢を見るようになったんです」
「夢?」
「・・・はい。夢の中で、いつも気が付いたら、真っ暗な玄関に立ってます。玄関も、他の扉も、開きません。開くのは、リビングに続く、ドアだけです」
「・・・それで?」
「リビングに入ると、真っ暗な部屋の中に、ひ、人影があるんです。こ、怖くて、私、震えが、止まらなくて・・・」
「落ち着いて。・・・ゆっくりでいい」
「・・・・・・。その人影が、赤い、涙を流すんです。そして、笑うんです。それが、私、不気味で、怖くて・・・」
「・・・それから?」
「・・・そこで、いつも、目を覚まします」
「いつも、って事は・・・」
「・・・はい。それから、毎日」
「それで、三宅の所に行ったわけか」
「・・・はい。以前カウンセリングでお世話になった事があるので、
「それで、私を紹介したと?」
「・・・はい。別側面の見地ならば、何かしらの解決法を見出だせるかもしれないと。・・・カウンセリングでは、とても長い月日をかけて少しずつ緩和していく事しか出来ないからって」
「・・・まぁ、三宅の言っている事は、間違ってはいない。肉体に行う手術とは違って、心の傷を癒やす最大の薬は、時間だからな。話は、以上か?」
「・・・はい」
「なら、私からの話は三つだ」
「・・・は、はい」
「まず一つ。沖野春奈さん。貴女の身辺を調べさせてもらう。場合によっては、知人などに話を聞く可能性もある」
「・・・そ、それは?」
「一つの前準備だ。調べる事によって、私が解決出来るかどうかを確認する。それと、依頼を受ける事による私達の安全も確認する」
「・・・わ、分かりました」
「二つ目。その調査をした上で、私が依頼を受けるかどうかを判断する」
「・・・え?あ、はい」
「三つ目。依頼を受けると決めた時点で、私から報酬を提示する。まぁ、一般から見れば法外な金額だろう。ただし、払えない額にはしない。理由は、方法によっては、法に触れる可能性もあるからだ」
「・・・はい」
「この三つが最低限の前提条件だ。これら一つでも納得がいかない、無理だと言うのであれば、回れ右して、今日、ここに来た事は、忘れる。・・・いいね?」
「・・・・・・」
「どうする?」
「・・・わ、分かりました」
「なら、先程の話で少し質問をさせてもらおう。嫌な記憶をまた思い出させてしまうが、構わないかい?」
「・・・はい」
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