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翌日、僕は噛みしめるように石段を一歩一歩登っていた。辺りを見渡して、見慣れた風景を再び目に焼き付ける。枝葉は僅かな風で揺らぎ、微かな葉擦れの音がそっと耳を撫でた。
『明日は、何があっても必ず行くんだ』
それは昨日の灯火の言葉。一晩考えても、その言葉の意味を僕が知ることは出来なかった。もともと彼女の思考に僕の思考が追いつけるわけではないが、やはり気になったからだ。
とはいえ、答えも出ぬまま、僕はこうして最後の道のりを歩んでいた。それはまるで、一種の儀式のように。
今までのそれはまるで、お百度参りにどこか似ていた。何度も足を運ぶ事で、願いが叶えられるのではという神頼み。しかし、その
だからこれは、決別の儀式。今日、ここを訪れる事によって、彼女にまつわる全てと、決別する為の。
いつかこの胸に
そうして忘れて、忘れたことすら思い出せなくて、生きていくのだろう。
その為の、道のり。
登りきって視界に広がった景色に、僕は落とすように微笑んだ。夢の中で初めて訪れた時の感情を、僕はもう思い出せない。
小さな溜め息を吐き、辺りを見渡す。変わらない風景を、何度も目にした風景を、二度と目にすることはないと、僕は何度も目に焼き付ける。そうする事で、渦巻く感情に蓋をする。
大きな石に腰を落ち着けて、僕は小さく息を吐いた。
何度も経験した、あの音のない世界。今、それに近い場所に僕は居る。ただ、一人で。
どれほどそうしていただろうか。太陽が位置を変え枝葉の隙間から
道路には、日中のためか行き交う人は
僕は、駆け出していた。
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