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彼女の自己紹介の後、僕らは手持ち
同じ夢を連続して見る。それは今まで見た夢の中でないとは言い切れない。なぜなら全ての夢を記憶していないからだ。むしろ、記憶に残らない夢の方がはるかに多いだろう。
しかし、夢が続くと言うのはさすがに初めてだ。彼女の様子を見る限り、同じように彼女の記憶にも前回の夢が
「大丈夫ですか?こんな顔になってますよ」
口元に手を当てて思案に耽る僕を、彼女はそっと窺い見て首を傾げながら眉をひそめている。彼女の視線と言葉に気付いた僕は、そんな難しい表情をしていたのかと思い、表情を
「あぁ、ごめん。少し考え事をしていて」
「何を考えているんですか?」
「うん。・・・不思議だなと、思って」僕は彼女の言葉にそう返して小さく息を吐き、ゆっくりと天を仰いだ。前回の時には確認しなかったが、改めて視界で情報を拾ってみると、やはり来た道同様に周囲を生い茂った影がどこまでも高く伸びていて空を覆い隠している。それは初めて認識したあの一本道に続く小さな空間と同じだった。それを確認した僕は再び彼女に視線を移して首を傾げる。「春日井さんは、不思議に思わない?」
「私ですか?・・・確かに思いますけど」彼女は先程の僕の顔真似(?)みたく眉をひそめて首を傾げた。「夢なら、不思議な事の一つや二つあるんじゃないですか?」
彼女の言葉に、僕は少し面食らいながらも小さく頷いた。その言葉によって、僕の中の彼女の印象を書き換えていく。不思議な事は不思議な事。それをそのまま
僕はどうしても、考えてしまう。理解出来ない事に関して、理解が出来るのか出来ないのか、理解が出来るなら、それはどのようなものなのか。はっきりしなければ消化出来ないとまでは言わないが、理解出来るものは、理解を示したいという性分なのだ。
そうやって少しでもこの異常な状況に理解を示そうと前回と今回の夢に思考を巡らせていると、僕はある事に気付き、彼女を見つめながら首を傾げた。僕のリアクションに、彼女も呼応する。
「そう言えば、言葉使い。・・・初めて会った時、敬語だったっけ?」
「あっ、それは、その・・・」僕から疑問を投げ掛けられた彼女は少し困ったような表情を浮かべて視線を落とした。「あの時は一ノ瀬さんが現れたのが突然だったので、気が動転してしまったというか、緊張していたと言うか・・・」
「あ、そうだよね。・・・ごめん」
「あ、謝らないで下さい」彼女は僕の謝罪の言葉に両手を広げて大きく振った。「気が動転した私が悪いんですから」
「・・・ふっ」
僕の口から、思わず笑みが零れた。こんな異常な状況にも関わらず、他愛もない会話が出来てしまう。そんなちぐはぐな場面に、思わず零れてしまったのだ。その様子を見た彼女は、僕が何故笑ったのかを知らないまま、つられるように笑みを零す。
無機質なモノクロの世界が、少しだけ緩やかに思えた気がした。
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