《俺はヒーローになる》
私がまだ幼稚園に通っていた時のこと。
同じクラスに居る幼馴染の男子である
当時はみんながそのようなことを言っていたので気にもしていなかったがそれから小学校、中学校と同じことを口癖のように言っていた。
月日が流れ達哉と私は同じ高校に進学した。
幼馴染ということもあってか何となく一緒にいることが多く、友達からは「付き合ってるの?」とか聞かれたがそんなことはない。
家が近いため帰り道もほぼ毎回一緒だった。
そんなある夏の日、私は帰り道にある古い雑居ビルへ入った。
小さいながらもここには飲食店や雑貨屋、文房具店、書店などが入っている。
私はビル4階にある雑貨屋に良く足を運んでいた。
いつもなら友達と来るがその日は皆用事等で時間が合わず一人で来ていた。
「(あ、そういえば来週達哉の誕生日だっけ)」
達哉の誕生日は七夕の日ということもあって覚えていた。
昔からのプレゼントをあげていたのでほぼ毎年の癖になっている。
「(去年はペンダントだったからなぁ……)」
私は辺りを見渡しプレゼントを選んでいた。
その時だった。
店内に火災報知機の音が鳴り響いた。
出火元は2階にある飲食店からだった。
すぐに逃げようと思ったが煙があっという間に4階までやってきた。
店内奥に居た私は逃げ遅れ煙が来ない窓際に身を屈めていた。
防火シャッターも閉まり安全かと思ったが古いビルのため完全には閉まらずそこから火の手が見えた。
「嘘でしょ!?」
火は入口を塞ぎ私は出られなくなった。
「誰か助けて……」
酸素が薄くなって意識が朦朧としてきた。
煙が立ち込める店内。
すると煙の中、非常階段のドアが開くのが見えた。
消防隊員かと思ったがそこに居たのは達哉だった。
達哉は私に気が付くとすぐに走ってきた。
「しっかりしろ! 大丈夫か!?」
「なんでここに……?」
「ノート返しに行ったら帰ってねぇし電話も繋がらねぇから」
「でもよくここが分かったね」
「途中でお前の友達に会って聞いたら雑貨屋に行ったって」
「でも雑貨やっていっぱいあるし……」
「プレゼント選んでたんだろ?」
「えっ?」
「お前が毎年くれるプレゼントここのだって知っていたからな。ほら行くぞ」
熱さのせいか照れているからなのか達哉の頬は赤く見えた。
達哉は私を軽々と持ち上げ背負った。
私は必死に背中に掴まった。
「ありがとね……」
「当たり前のことしただけだ。俺はヒーローになる男だからな」
「そう……だね……」
ほっとした私はそのまま達哉の背中で意識を失った。
目が覚めると病院のベッドの上だった。
軽い一酸化中毒だったらしいが命に別状はなく後遺症等も無かった。
それもこれも達哉が助けに来てくれたおかげだった。
後々医師から聞いた話だともう少し遅かったら手遅れだったらしい。
あの火災から5年が経った
私が達哉と付き合いそして結婚するのはそう遅くはなかった。
結婚後私は専業主婦になり夫である達哉は消防士になって街のヒーローをやっている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます