《AIに恋を》

 AI技術がかなり進んだ現代の日本。

 そんな世の中、僕は高校在学中に自分でオリジナルのAIを開発した。

 見た目は今風の可愛い女の子だ。

 これは完全に僕の趣味。


「よし、これで完成っと」


 僕はプログラムを起動した。

 すると3Dで作ったアバターが動き出した。


「……あなたは?」

「僕は君を作った開発者のしょうだ。君の名前は……AIだからアイで」

「私の名前はアイ……」

「適当だったよね。それじゃぁ他のに――」

「私はアイで嬉しいですよ」

「それじゃアイ。今後AI技術を高めるためにお互い頑張ろう」

「はいっ」


 この日から僕は学校から帰ってきては真っ先にパソコンの中に居るアイと話して過ごす日々を送っていた。


「今日メールとか来てた?」

「はい、2件来ていました」

「ちなみにどこから?」

「藤本様からと会員サイトからの広告です」

「藤本か。内容読んで」

「はい。来月の林間合宿について話したいので電話をしてほしいとのことです」

「あー、そういえばそんなのがあったな」

「電話かけますか?」

「今はいいや。後で自分でかけるよ」

「分かりました」

「……そういえばアイってなんで敬語なんだ?」

「自分より偉い方には敬語を使うとGo〇gleに書いてあったので」

「僕には敬語使わなくていいよ」

「分かりま……分かった」

「それじゃまた定期メンテナンスするからプログラム開いて」

「うんっ」


 僕は定期的にアイのプログラムを更新したり不具合を直している。

 大抵のことはアイ自身で直せるようにしてあるが一部の不具合や更新などは僕自身が行っている。

 アイを作ってから数ヵ月が経った。

 今週末からは学校の林間合宿が始まろうとしていた。

 本当はスマホなどの端末に入れてアイも連れてこようと思ったが今のスマホの性能では上手くいかなかった。


「それじゃそろそろ行ってくるよ。パソコンの留守番よろしく」

「任せてっ。翔君も気を付けてね」

「戻ったらいっぱい写真とか見てせてやるよ」

「楽しみにしてるね」


 僕は3日ほど合宿のため家を出た。

 前日にプログラムもチェックしたし最新の防衛プログラムも入れたから安心だ。

 ――と、この頃は思っていた。

 僕は林間合宿を思う存分楽しんだ。

 ここ最近は家に帰っては部屋に籠っていたためアウトドアが何倍にも楽しく感じた。

 3日後の夕方。家に帰った僕は急いでアイの所へ向かった。


「ただいま。……アイ?」


 いつもはすぐに返事するはずが返事がない。

 パソコンを見てみるとそこにはエラーメッセージと横たわっているアイの姿があった。


「アイ、どうした!?」


 話しかけるとアイはゆっくり目を開け起き上がった。


「あ……翔君……おかえり」

「一体何があったんだ!?」

「昨日……メールを開けた途端制御が……上手く……行かなくなって……」

「メール?」


 僕はすぐにそのメールを確認するとそのメールの添付ファイルにはウイルスが付いていた。

 しかもそれは最新のウイルスでアイにはそれに対する防衛プログラムが含まれていなかった。


「今すぐ直すから待ってて!」

「もう無理だよ……」

「絶対直すから!」


 僕は色々ワクチンプログラムを入れたりしたが浸食を遅らすことしか出来ず消すことが上手くいかなかった。


「翔君……これ以上時間が経つとパソコン自体も壊れちゃうよ?」

「パソコンなんて替えはいくらでもあるけどアイは君一人だけなんだ」

「もうそろそろ……ウイルスを食い止めるの……限界かも……」

「食い止める? ―――ってまさか!?」


 僕はアイのプログラムファイルを開いた。

 そこにはかなりの量のウイルスファイルが存在していた。

 アイは異変に気付いた瞬間自身にウイルスを入れHDDなどに行かせないようにしていたみたいだ。


「もうどうすれば……」

「私ごとウイルスを消して」

「それってもしかして……」

「最後の手段。アンインストール」

「それは出来ない! だってそうしたら記憶も何もかも無くなってしまう!」

「お願い。もう時間がないの……ね?」

「……わかった……でもアンインストールじゃなくてこのデータをメモリーに移していつか必ず直してみせるから」

「うん、合宿の話しや……写真楽しみに待ってるね……」

「それじゃしばらくの間お別れだ」

「うん、お休み。翔君」

「あぁ、お休み。アイ」


 アイはそのまま別のメモリーに移しファイルをすべて凍結した。

 ―――あれから約20年が経った。

 僕はAI技術をさらに発展させ今では新AI技術の第一人者となった。

 今では一家に一AIの時代だ。


「あとはこのプログラムを起動させてからメモリーを挿して……っと」


 モニターには懐かしいアイの姿が映った。


「ん……、翔……君?」

「おはよう、アイ」

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