《古びたお守り》
我が家には昔から不思議な物がある。それは古びたお守りだ。
それが飾ってある場所がとても不思議なのだ。
私のお父さんの部屋にはトロフィーなどが飾られているガラスケースがありその中に大事そうに飾ってあるの。
お父さんは高校、大学は主席で卒業し数々の賞を取っている。現在は政治家で
そんな人がなぜこんな古びたお守りを持っているのだろう?
小学生の頃、私はお父さんに対し「何でここにあるの?」と聞くと「これは大切な人から貰った大事なお守りなんだよ」と言っていた。
しかしもう一点気になることがある。そのお守りは物凄く手作り感がある。お母さんからかと思ったが違うと言っていた。
お母さんに聞いても出会う前から持っていたらしい。
一体誰に貰ったのか……?
ある日、私はそのお守りとそっくりなのを作ってお父さんにプレゼントをしようと考えた。
裁縫をやる授業でお守りを作ることにした。何年も見ているから我ながら上出来。
家に帰る途中いつもの道を通っていると誰かに呼ばれた気がした。
「誰?」
辺りを見渡すが車が走っているだけ。
そもそもこんな騒音の中遠くから声が聞こえるはずがない。
気のせいだろうと思い再び歩き出すとやっぱり何かが聞こえる。
私はその声に導かれるかのように歩きだした。
徐々に人通りが少ない道に入って行った。
「ここって……」
そこは昔からある線路の反対側に行くだけの地下道。
薄暗く狭いため地元の人もあまり通らない。
そもそも線路の反対側に行くなら広く新しい地下道や駅を通れば行けるからだ。
しかしこの奥から何かを感じる。
私は薄暗い地下道を通り反対側に抜けた。
するとさっきまで私を呼んでいた声が消えた。
「(何だったんだろう? まぁいいや。早く帰ろっと)」
再び地下道を通ろうと振り返った私は自分の目を疑った。
「なに……これ……」
今さっき通ってきた地下道が工事中と書かれたフェンスで封鎖されていて通ることが出来なくなっていた。
私は辺りを見渡すと見覚えのない看板や建物がある。
「(この看板の人ってあの芸能人に似てるけど息子なんて居たかな?)」
スマホで調べようと開くが街中なのに圏外だった。
辺りを見渡すと工事の看板には30年前の日付が書いてった。
「(え? どうなってるの?)」
もし30年前ならあの地下道はまだ開通していないはず。
私は辺りを散策した。良く行く古い喫茶店はなんだか新しくて、自動販売機には見たこともない飲み物が入っていた。
少し歩くと公園が見えてきた。
「(こんなところに公園なんてなかったはず)」
私は休憩しようと公園へ向かった。
すると路地から走ってきた人と私は出会い頭にぶつかり転んでしまった。
「いったーい!!」
「ご、ごめん。僕の不注意で」
見てみるとそこには学生服を着た少年が手を差し伸べていた。
「こっちこそ不注意でごめんね」
私は少年の手を取り立ちあがった。
路上に少年の荷物が散乱していた。
「荷物片づけないと」
「私も手伝うよ」
私は少年と共に荷物を拾い集めた。ノートや教科書、引き用具など。学校にでも行って居たのだろうか?
制服を見ると見覚えのある校章が付いていた。
「(私の通ってた中学のだ)」
散乱した荷物を全て集め終わり鞄に仕舞い終わった時、少年は突然「あー!!」と少年は何かを思い出したかのように声を上げた。
「な、なに!?」
「電車行っちゃった……これじゃ塾に間に合わないや……」
「えっと……ごめんなさい」
「君が謝らなくていいよ。遅刻してた僕も悪いし」
「あのさ、お詫びといってはなんだけど勉強見てあげようか?」
「いいの?」
「これでも高校生だからね」
「それじゃお言葉に甘えて」
私達は近くのファミレスに入った。やっぱり知ってるファミレスとは違う。
席に着くと少年は鞄から数冊の問題集を取り出しテーブルの上に置いた。
「問題集多いけどどこの高校目指してるの?」
「僕は北高にしようかなって」
「北高? そこって……」
「うん。凄くレベルが高いんだよね。僕でも行けるかな……」
「いやいや。私そこ通っているんだけど――――」
「えっ、本当に!? でも制服が違うような……?」
北高の制服は数年前に変わったのだから知らないのも当たり前か。
「細かいことは気にしない。ほら、勉強しよう」
私は少年に勉強を教えてあげた。自慢じゃないがこれでも勉強ができる方だ。
しかも少年は予想以上に覚えがいい。まるで乾いたスポンジが水を吸うかのように次々方程式や年号、元素記号などを覚えていった。
「覚えるの早いね」
「そうかな?」
「この調子だと余裕で北高行けるって」
「……ありがとう。なんか自信出てきた」
問題集を黙々と解いていった。
気が付けば空はオレンジ色に染まり外灯には明りが灯った。
「私、そろそろ帰らないと」
「途中まで送るよ」
「ありがとう」
私は通ってきた地下道へ行くとフェンスは外され通れるようになっていた。
不思議と通れると思っていたのだ。
「それじゃ私はここで」
「うん」
「あっ、そうだ。君にこのお守りにあげるよ」
私は鞄から手作りのお守りを取り出した。
「いいの?」
「また作れば良いし」
私はお守りを渡すと少年は大事そうに両手で握った
「ありがとう。大事にするよ」
「高校受験頑張ってね」
「うんっ! ……あのさ、最後に名前聞いていい? 僕の名前は二木学」
「えっ!?」
その少年は30年前のお父さんだったのだ。
よく見ると確かに似ている。
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない。私の名前は―――秘密ってことで」
「どうして?」
「私の名前を知りたかったらもっと勉強して偉い政治家になってみて。そしたら教えるよ」
「その時になったら名前教えてよ」
「うん、それじゃまたね」
私は地下道を通っていった。
地下道を抜けるとそこには見おぼえのある景色が広がっていた。
再び通ってみるがもう二度とあの時間へ行くことは無かった。
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