12月の22回目
「じゃあ。わかったかな。去年もやったからなんとなく覚えてる子もいるだろうけど、ちょっとでもわからないことがあったら聞いてねー」
としくんが普段より大きな声を出している。その声を聴いて子どもたちは大人しくうなずいている。見たことがある顔もちらほらいるし、としくんのことにも慣れているのか、緊張した顔の子はいない。としくんの喋りがそうさせているのだろう。
そんなとしくんの横顔を見つめてしまう。すっかり大人の顔になった気がする。最初は高校生から上がったばかりでまだまだ子どもぽかったのにすっかり落ち着いた顔になった。それこそ覚悟を決めた人の顔をしている。
それがちょっとだけうらやましい。
「今日は特別ゲストも来てくれてるので、一緒に遊んでいきましょう!」
そういってとしくんの手が春の方へ向く。司会らしい振る舞いに戸惑いながらサンタの格好をした春は顔の横で軽く手を振る。
それだけで子どもたちは盛り上がってくれる。サンタさーんと言った声すら聞こえてくる。
やめて欲しい。あなたたちにプレゼントを渡せる自信なんてどこにもないんだ。むしろもらいたいくらいだよ。
はあ。とそんな気持ちになってしまうのにも嫌気がさす。
遊ぼうとしているのは紙ペンゲーム。紙ペンゲームはみんなに共通の紙を配る。そしてその紙に代表が引いたカードやさいころの結果を書き込んでいって得点を目指す。一番手軽なやつはきっビンゴゲームだ。あれは運しかないからちょっと違うかもしれないけど。
としくんがお気に入りのゲームだ。なにより大人数で遊べるのがいいと言っていた。春的には待ち時間がないのがいじ。だれかのアクションを待っていることがないのだ。それと常に自分の盤面だけを考えていればいいのも魅力のひとつだ。他人の盤面に介入できないしされないっていうのはひたすらに探求していくみたいで心地よい。
今回遊んでいるのはポーションポットトレイル。ポーション屋さんになって素材を集めて品揃えをよくするために行動する。さいころの目を使った紙ペンゲームだ。通った場所の素材が使えなくなったり、能力を得たり。ファンタジー感満載なゲームだ。
ぱっと見は細かく書き込まれいる六角形が気になる人もいるだろうけれど。子どもたちは夢中になって紙とにらめっこしている。それがほほえましくて、悩み過ぎているこがいないかどうか見守りながら歩き回る。これが今回の春の仕事だ。
割とみんな順調みたいで楽しそうに頭を悩ませている。
真剣に向き合っている姿は見ていて好感も持てる。
「あのぉ」
ひとりの子の横を通った時に声がかかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます