12月の4回目
なんだか懐かしさがこみ上げてくる。
昼間の太陽は構内に差し込んでいる。ただ、冬だ。その光は真上と言うより少し斜めから入り込んでいるのだけれど。その光が机の上にある何かに反射している。
入学した時のことがフラッシュバックする。あのときもこんな風に光っていたものがあった。
それは
使わないさいころが春の部屋にもいくつもある。
少しだけ昔のわくわくを思い出してうなだれた体を起こすとゆっくりと光のもとへ近づいていく。
もしかして千尋みたいな人がほかにもいたりするのだろうか。もしかしたらサークルの後輩だったりしないだろうか。
久しぶりに胸を躍らせたのだけれど、それは一瞬のことだった。
透明なプラスチック。立方体でもない。ただのかけら。ペットボトルの破片みたいなやつ。つまり、ゴミだ。
仕方なしにゴミ箱へと捨ててあげると、座る元気もなくなったので講義室をあとにする。ここでサークル棟に行きたいところでもあるが。恰好が恰好だけになるべく行きたくない。
12月にもなって先輩がリクルートスーツで現れたらどんな顔していいかわからないよね。
面接のついでに大学の求人を見にきたはいいものの見知った求人ばかりだった。この時期になればそんな好条件なものもなく。贅沢は言っていられないのだけれどだからといってなんでもかんでも飛びつきたくはない。
労働自体嫌いじゃないと思う。ボランティア活動に近いこともたくさんやってきた。まあ、だいたいボードゲームに関することだったけれど。
だからと言ってボードゲームにまつわる仕事なんて求人にあるはずもない。
そもそもボードゲームを仕事にするのはなんか違う。
ボードゲームは好きだ。これから先もずっと遊んでいく自信がある。けれどそれが仕事になるかと問われるとやっぱ違う。
メーカーに入って和訳販売したり、ボードゲーム作家を目指したり、販売しているお店で接客したり、それこそ店長やとしくんみたいにボードゲームカフェで働いたり。
かかわり方はたくさんあると思うのだけれどどれもピンとこない。春からすればボードゲームは遊ぶものでそれ以上でも以下でもないのだ。
だからと言って働きたい業界とかなかったんだよなぁ。
その迷いが今につながってしまっている。春はそう思っていた。
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