12月の2日目
春はあんなに賑やかなのに。冬はろくに人も歩いていない。12月が始まった最初の月曜日とすればなおさらだ。
真面目な学生たちは1時限目から通っているが、冬の冷え込みでその真面目さは長続きしていないようだ。あまりの殺風景な光景に入学したころと比べてしまう。
気合を入れてウェーブをかけた髪の毛がくしゃっとなるのが嫌で人込みを避けながらゆったりと昇っている歩いた。
同じ道を歩ているのだけれど。いったい何が変わったのだろうと春は考える。
うーん。とすこし頭をひねる。もうちょいひねる。でも、なにひとつとして変わったものが見出せなくてちょっと落ち込む。
変わったのは外見だけだ。まっすぐに伸びた髪を後ろにまとめて、リクルートスーツを着てきっちりした格好をしている。
歩きにくいなと思う。あのころとはまったく違った理由だ。
ふぅ。と口から息が漏れる。
まったくもって似合わないな。らしくない。家を出る前に姿見で確認した自分自身への感想だ。
それだけじゃない。ちょっと。いや、わりと就職が決まらないからってとしくんに八つ当たりまでして。さらには店長に決まらなかったらここで働けばいいよ。とまで言われてしまった。
ほんと情けないよ。
ふと。歩みが止まる。前に進むの疲れてしまった。
キョロキョロとあたりを見渡す。どこを見ても知った場所になった校内は春のことを迎えてくれているようには感じられない。それはきっともうすぐ出ていかなくてはいけないからだ。
でも卒業したところで行く場所がないことも確かだ。家に籠るわけにもいかないし。バイトでもつなぐにしてもどこかを探さなきゃ。
いけない。ちゃんと弱気になっている。
こんなはずじゃなかった。夏には就職先が決まって、今頃は同期になる人たちと一緒に交流を深めながら事前研修とかをしているはずだったのに。予定と違い過ぎるんだもの。
なんとなく、メインの通りを歩き続けたくなくて横道にそれる。建物と建物の間は相変わらず裏路地みたいに狭くて、ちょっとだけ気分を盛り上げてくれる。
建物の中をのぞけば講義を受けた教室が目に入る。懐かしさばかりがこみ上げてきて、胸の奥が震える。
不意に冷たい風がまとめた髪の毛を揺らす。凍えてしまって体も震える。
寒い。
いくら厚着をしても温まる気がしない身体。どこかへ入って温まろうかととりあえず建物へと入った。
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