第2話 救うための追放ルート
「メニュー。ステータス」
LV:5 → 12
HP:100 → 350
MP:5 → 5
SP:100 → 350
ATK:10 → 40
DEF:3 → 5
SPD:10 → 70
LUCK:5 → 20
GLS:0 → 1
レベルも上がった。5LV→12LV。ジェイコフは32LVだから当然だ。本来ゲームでは相手のレベルも見ることができるのだが、どうやらこの世界では見ることができないようだ。
だが何千回とこのゲームを繰り返している俺は記憶していた。
攻撃モーションを繰り出してみると、先ほどまでの攻撃よりも速度が上がっている。
このゲームは全年齢対象なので、血はあまり出ない。転生してもそれは同じなようで、罪悪感を抱かず済みそうだった。これで悪役を全うできそうで安心する。
『Code:Etherion』は変わったゲームだ。キャッチコピー『AIからの挑戦状~己を信じ、己の全てで、ヒロインを救って見せろ~』
序盤はよくあるVR型の異世界RPG。
主人公の勇者を操り、ヒロインを攻略しつつ分岐するルートを楽しむ剣と魔法のファンタジー。
だが後半はAIがシナリオを創造している。
盛大に宣伝され賛否両論あるゲームだった。
AIに作らせることで、無限にシナリオが分岐する。
AIがシナリオを作っているからか、バグというか謎の現象がちょくちょく現れる。
ジェイコフを倒しても犯罪者にはならない。なぜか彼はモンスターのようにリスポーンするから。
ジェイコフボコボコスパイラル(俺命名)はAIのバグ? の一つだ。
また明日になったらいつもと変わらず、彼は俺を起こしに来る。
だから一日一回ジェイコフをボコボコにして金とアイテムを巻き上げ、倒し、経験値にする。ジェイコフをボコボコにすることが最短で安全なレベルアップ方法の一つだった。
NPCのほとんどは倒すと復活しないが、ジェイコフのようにリスポーンするキャラもいる。だから倒したというのにGLS(敵対率)が1の増加で済んでいる。
父や母、兄弟などの主要NPCキャラを殺すとGLSが跳ね上がり、あらゆるNPCから襲われる羽目になる。
つまり普通の犯罪者扱い。
俺はそのルートも選択したことがあるが、ネイも狙われる対象になってしまうのだった。このゲームを繰り返し、数多くのNPCを襲い、誰が倒していいNPCか把握している。
「そろそろネイが来る時間だ。散らばった部屋を片付けておこう」
ネイが食事を運んでくるのだが、高確率で失敗することになる。失敗しない時もあるのだが、何をやってもそれは運の要素でしか決まらない。少しでも失敗の確率を下げるため、部屋だけ片付けておく。
『猫耳少女、ネイを救う』
という目的を提示する、AIが作るシナリオが俺のようなゲーマーを沼らせた原因だ。
勇者の物語を進めていくと、毎回必ず悪役貴族が主人公の邪魔をする。
それは別にどうでもよかった。
ただ、悪役貴族エドガーと敵対すれば、従者の猫耳少女ネイが彼を庇い、死ぬ。
猫耳少女は健気に悪役貴族に尽くしており、大変かわいらしく、救いたいと思った。
ところが悪役貴族と共闘しても、悪役貴族を守るため、猫耳少女は死んでしまう。
悪役貴族のルドガーが弱いから。
どのルートでも猫耳少女が死んでしまうことに気づく。
ネット掲示板にも俺の同志が数多くいたようで、無理ゲークソゲー理不尽ゲーの非難が溢れていた。
そしてキャッチコピーの救うべきヒロインなのは猫耳少女で間違いない。どのルートでも彼女の非業の死を描写していたから。
ゲーマーの端くれの俺にとってAIからの挑戦状という煽りだけで、絶対にクリアしてやるという気持ちになった。
何百回と異なるエンディングを見た所、視界いっぱいに『救え』というメッセージが現れ、世界が暗転。
悪役貴族を操作できるようになった。
エドガーが誰にも負けないくらい強くなれば、猫耳少女を救える。
そう思い、俺は熱中した。
猫耳少女を救うルートを見つけるために。
何百何千とゲームを繰り返した。睡眠も食事も忘れ、プロゲーマーとしての仕事も放り投げ、ゲーム攻略に心血を注いだ。
その結果過労死したらしい。
死因がゲームのやりすぎは、ゲーマーの誉れ。
そしてなんとボーナス付き。ゲーム世界への転生。
幸運、そして少女を救う最後のチャンス。
真っ当な貴族になる王道を突き進んだが、獣耳少女を全てのルートで救えなかった。
唯一可能性のありそうなルートは小悪党の悪役貴族に成りきり、追放され猫耳少女を守る国を造ることだ。
邪道の王道を突き進む。
猫耳少女さえ救えればいい。
強くなり、小悪党な悪役としてヴィクトル家を追放される。
追放イベントで、エドガーの特性を最大限引き出し、かつ魔女を仲間にするために必要な『破魔の籠手』を手に入れる。
それが当面の俺の目標だ。
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