ボクが本を読まないことを 母は残念がっていたけれど。

 ボクが本を読めないことも 母は誰より知っていたから。


 無理に本を読めとは言われなかった。

 無理強いされることがなかったのは、今思い返すと とても有り難いことだったね。



 ボクは

 学校の宿題で 毎日 音読するのが苦痛だった。


 見ても、読めないのだもん!


 それを分かっている母は、まず教科書を読んで聞かせてくれた。


 母が読むのを聞いて ボクは、

 やっと 少しだけ そこに何が書いてあるのか

 ほんとうに 少しだけだけど 分かるような気になったんだ。


 学年が上がって「分かち書き」のなくなった教科書には、

 母が線を引いてくれた。


 読解が難解な説明文は、指示語の解説もしてくれた。












……母さん、ありがとう。



 今なら、そう言えるかな。








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