第7話 よその魔王も配下作っている様子
駅前のショッピングモールならとりあえず一通り揃うはず。
安易な考えの下、俺は魔王を連れて歩いていた。
美麗な外国人風の魔王がめちゃくちゃに他人の目を引くのか、やたらとねばっこい視線を感じる。失せろチンカスどもめ、こいつは俺の上司だからな。
周囲を威嚇しながら歩いていると、駅の方に人だかりが見えた。何かあったらしい。
「キチガイだってやば~!」
「しかもまた外国人でしょ? いい加減にしてほしいよねー」
近くで女子高生たちが大きな声で話している。
政治家モドキに売国奴にしか見えないようなやつらが増えた結果、外国人関連のいざこざは急増している。
真か偽か不明なネットの噂だが、こんなとこまで噂の波が来ているのか。
危なそうな、そういうところには近づくまい。
途中で道を折れて、回り道をしようとしたところで、ざわめきが広がるのを感じた。なんだかこちらに向かってきているような。
「ゴミムシの配下が寄って来ておる。さっさと排除するんじゃぞ」
「は?」
突然、魔王にそう言われたが意味が理解できなかった。
戸惑っている内に騒ぎの元凶が顔を見せる。
顔面を真っ赤にした日本人ではないアジア系の男が、両腕を振り回して人垣を破壊しながらこちらに走ってきていた。何か叫んでいる。
「ひれ伏せひれ伏せひれ伏せひれ伏せひれ伏せ!!!! 属国チョッパリの分際でなぜ我が誇りある大正義全世界統一韓民帝国一級国民のおれと同じ目線に立っている!?!?!? 地べたに転がって崇めよ崇めよ崇めよ崇めよ崇めよ崇めよ!!!!!!」
「うわぁ……」
昨今の国際環境の中、俺も少なからず良い感情を抱いてはいない国だが、さすがにこれは国の教育というよりは危うい思想の方を疑う。
「アレが何だって?」
「ゴミムシに干渉された使い捨て兵士じゃな。ところ構わず干渉しとったようだが、妾を不快にした上で作りたかったのがアレかと思うと苛立ってきた」
「おい、こんな公衆の往来で変な力を使おうとするのはやめろ」
危険な男に立ち向かおうとする魔王をなんとか抑える。
その一方で男は火事場の馬鹿力とでもいうのか、取り押さえようとする勇気ある通行人を腕の一振りで弾き飛ばして着々と歩みを進めていた。吹き飛んだ男性が道の反対まで転がっていく。
カルト宗教に侵された信者のパワー半端ない。そういうことじゃないか。
問題は彼がこちらに向かってきていることだ。
魔王は排除しろとか言っていたが、裁縫しかスキルのない男にどうしろと? 警察でも呼ぼうか?
やはりさっさとこの場を離れるべきか、と判断しかねて惑っている内に、暴れていた男がついに錘を振り払い加速――そして、斜め上から降ってきた何かと衝突した。
「え?」
男は血煙を上げながら吹き飛び、その場にはフルフェイスヘルメットの怪しい別の男がスタッと着地する。
フルフェイス男は握り拳を掲げて大声を発した。
「世界に悲しみを振りまくその悪魔的所業! たとえ国家が許しても正義の心が許さない! この正義超人セイクリッドがいる限り、好き勝手できるとは思わないでもらおう――!」
なんやねん、その名乗りは。
「こちらはめんどうくさそうな配下じゃな……。今のうちに行こうではないか」
「あ、おい……」
唖然として眺めている俺の手を引く魔王に連れられて、サイレンが集まりだす駅前から俺たちは移動した。
え? もしかしてコレもアレも別の
あんなのと物理的に戦ったりしなきゃならんのか?
ようやく追いついてきた理解だが、今しばらくは理解したくない気分だった。
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