第1章 起点3
所内勤務をする際に知っておくべきことの一つに、寿命の長さの違いがある。
囚人たちの寿命は長くて120歳くらいだが、対して私たちは平均寿命が120歳くらいだ。
会ったことはないが180歳を超える長寿もいるらしい。
なぜこれ程の格差があるかというと、ひとえに人為的な環境汚染や社会毒による影響が大きい。
空気、食べ物、水といった生命活動に必要不可欠なものを筆頭に放射能、電磁波、石油由来の薬物、農薬、除草剤、食品添加物、白砂糖、遺伝子組み換え食品、ゲノム編集された生鮮食品などの弊害により平均寿命が短くなったのだろう。
収容所の史実からは抹消されているが、私が以前読んだ人類史学の本には所内でも150歳以上生きた者の記録が残っていた。
私の生まれ育った世界では平均的な食事の回数は2〜3日に1回だ。
食事量と老化現象が比例関係にあることは誰でも知っている。
食べれば食べるほど内臓器官に負担が掛かるからだ。
5日に1度の食事で充分だという人もいるくらいだ。
収容所内で広く流通している石油から精製された薬は存在しない。
体の不調を感じたときは断食を行うか、野に自生している薬草を煎じて服用するか、患部に塗るのが通例となっている。
怪我や病気のすべてを自然療法によって回復させるのが慣わしだ。
囚人たちの中には私たちと近似した生活習慣を実践している者もいるらしい。
毒物を摂らないことで間違いなく免疫向上が見込まれるが、悪化の一途を辿る生活環境の汚染が足を引っ張ることになるだろう。
収容所内の環境汚染は深刻な状況にあり、看守や管理人という職種が敬遠される理由の一因にもなっていた。
所内勤務で病気に罹りやすくなるとか、短命になるといった風評が広く知れ渡っていたからだ。
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