第2話
異例中の異例と言われた人事採用により希望していた職場に就任となった。
それまでは家族の仕事を手伝いながら学校に通っていた。
主に心理学と自然療法学と動物生態学を学んだ。
テストや成績表とかは無いのではっきりとは言えないけど、たぶん周りの人と比べると優秀な方だったと思う。
幼少期から足繁くその手の講義ばかりに出席していたおかげだろう。
3ヶ月程前、自宅のコンピューター上で管理人の公募要項が目にとまり、
これだ!
と思いすぐに応募した。
適正試験は主に心理学と生態学と脳科学に重点が置かれていた。
出題された項目や課題は私の知っていることばかりだった。
拍子抜けするほどあっさりと2週間後に合格通知が届き、世界で唯一無二の役職に任命された。
採用決定後、職場の上司にこう言われた。
「続けられないと思ったら、無理しないでいいから」
この仕事を選んだ理由は、自分の知らない世界を覗いてみたかったからだ。
一般の人には公開されることのない収容所内のことを知りたかったのだ。
着任してまもなく研修と引き継ぎも兼ねて2週間だけ前任の管理人に同行して収容所の中に入ることになった。
収容所内に赴き所内に派遣されている(看守)と面会し、管轄区域の現状報告を受け、併せて現場の視察をするという任務だった。
今後の現場の下見のようなものだったが、私にとっては刺激的な社会科見学になった。
収容所内は、私の想像を遥かに超えた広大な世界だった。
大自然に覆われている地域があると思えば、林立する高層ビル群の街があり、人種、言語、服装も多種多様で見るものすべてが私の目を釘付けにした。
耳や鼻に金属の輪をつけていたり指の爪を塗料で色着けしている者もいた。
髪の色もいろいろで、私の髪と同じ色をした者も都市部では見かけた。
個々人の価値観が千差万別なのも興味深かった。
特に驚いたことは、囚人という肩書きからは想像し難い贅沢三昧の生活をしている者たちが少なからずいたことだ。
彼らは高級車を乗り回し助手席には美女を従え、いかにも高級そうなスーツを身に纏い、ゴルフコースほどの敷地にプール付きの大邸宅を所有し、この世の春を謳歌していた。
なかにはプライベートジェットや豪華クルーザーを保有する者までいるのだった。
そんな分不相応としか思えない特別待遇に半ば呆れかえり、次第に彼らに対する反感と苛立ちが募りだし、次いで嫉妬心が後追いし、それから3日もすると彼らを羨望の眼差しで見るようになっていた。
後に彼らは(看守)の取り巻き連中だと知らされたのだった。
赴任して5ヶ月が経った頃、上層部からの通達で収容所内の現地出張が命じられた。
待ちに待っていた業務命令だった
出張の前日まで仕事部屋にあるコンピューターに齧りついた。
仕事部屋のコンピューターから収容所内のインターネットに接続し、事前に知り得る情報をできるだけ仕入れた。
特別許可された者だけが収容所内のインターネットや携帯電話にアクセスすることが可能で、管理人もその中のひとりだ。
そこから得られる情報は、まさに収容所内の取り扱い説明書そのものだった。
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