第63話 レイバックを背負う者②

 ファビオの『大丈夫』と言う言葉を聞いて不安が払拭された。今も続いている模擬戦に目を向け、サンドラの勝利を信じ声援を送った。


「サンドラ頑張るのよ!」


 サンドラは私の声援に応えるように『コクリ』と頷くと、姿勢を低くして一気に踏み込んだ。先程とは比べ物にならない速さで斬り掛かるも、自動防御イージスの効果が発動して斬撃を受け止める。


『ガッ、ガツッ、ガキィン!』


 自動防御イージスの効果により、リリアの認識外で自動的に盾が斬撃に反応する。サンドラの攻撃は速くなっただけではなく、盾に当たる打撃音から威力も増している。魔術タイプで身体能力の低いリリアは、盾を持つだけで精一杯で苦悶の表情を浮かべた。


「くっ……」


 サンドラは反撃の隙を与えず猛攻を続ける。非力なリリアは体力の限界を迎えて、盾が弾かれ声が漏れるのだった。


「あっ、しまっ……、うっ」


 サンドラは冷めた表情でリリアに剣先を向けたところで『ピタリ』と動きを止めると、叔母様へ顔向けるも勝利宣言は上がらなかった。


「何をしている? 私は試合を止めた覚えはない。模擬戦だからといって寸止めなどせずに、しっかりと打撃を入れるべきだろう」

「はい、判りました」


 叔母様の言葉を受けて、サンドラが双剣を構え直して攻撃姿勢をとると、リリアは盾を持っていた手を慌てながら振って、自分に戦う意思がないことを告げた。


「ちょっ、待って! 負けよ。降参するわ」


 リリアが戦意喪失により負けを認めたことで、模擬戦を続けることは不可能となりると、叔母様が不機嫌そうに試合終了を告げる。


「ちっ、腰抜けが、勝者サンドラ」


 リリアは『ガックリ』と肩を落としながらAクラスの元へ戻る時に『聖女の私がモブキャラに負けるなんて』と呟いているのが微かに聞こえた。


(モブキャラって意味はなにかな? あの言い方だと、サンドラのことを言ってるのは間違いないけど……)


 知らないワードが聞こえたので、それがどういう意味かを考えていると、叔母様が次の模擬戦に出るカルビンを呼ぶ、私は気持ちを切り替えて応援に集中する。


 次に出てきたAクラスの生徒は、リリアのように特別な装備を持っていなかった。そして試合の方はというと、たった一撃で相手を気絶させる『瞬殺』で終わったのだった。続くアンドレアス達も、たった一撃で終わらせるという圧倒的な力の違いを見せつけた。そんな状況に驚く私の様子を見たファビオは『クスクス』と笑いながら声をかけてきた。


「レイバックを背負う者なら当然だよ。じゃあ、僕も直ぐに終わらせてくるね」


 そう言ったファビオは、武器を持たずに素手で相手を瞬殺したのだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る