第59話 自己紹介②

 レイバック辺境伯領出身者の自己紹介が続いた後は、留学生2人の自己紹介となる。弱小国であるファーガソン王国へ留学する生徒は珍しい。来るとしても爵位の低い令息令嬢なので、帝国の第三皇子や聖教国教皇の血縁者が留学してくるのは、高等科学園を創設してから初めてみたい。そんな大注目の2人がこれから自己紹介するの。


「キリアム.ローソンだ。俺は帝国の第三皇子で、兄貴達とは違い帝国で帝王学を学ばず、刺激を求めてここへ遊びに来た。それなりに優秀だと自負していたんだが、まさか俺の上に3人も居ることに驚いたぜ。まぁ、今の順位はあくまで試験結果だからな、授業では巻き返してトップに立つぜ! 以上だ」


 なんとも俺様な態度のキリアム殿下、ファーガソン王国はローソン帝国の庇護下にあるので、あの態度は仕方ないことなのかな? なんて思っていると叔母様が口を開いた。


「典型的な『ボンボン』だな。帝国で兄と比べられるのが嫌で逃げ出してきた腰抜けか。腐った性根を私が叩き直してやる」

「なっ! 帝国の庇護で存続している属国の分際で! お前の言葉を親父に伝えれば大問題になるんだぞ?」


 叔母様の言葉を聞いたキリアム殿下は、顔を真っ赤にしながらも反論というよりも、脅すように切り返した。話し方から見てもプライドは相当に高そうだね。


「そうか、本当のことを言われてキレるとは器の小さい奴だな。属国での授業は厳しくて、『僕ちゃんには耐えられなかった』とパパに泣きつくことになるヘタレ皇子に、時間を割くのは勿体ないから次だ」

「おい!」

「次だ!」


 キリアム殿下は何か言おうとしたけど、叔母様はそれを軽く無視して、次のフランチェスコに視線を向けて自己紹介を促した。顔を真っ赤にして立ったままのキリアム殿下を横目に、フランチェスコは爽やかな笑顔を見せながら口を開いた。キリアム殿下は不服そうにしながらも席に着いた。


「ヴァレンティ聖教国より参りました。フランチェスコ.ヴァレンティと申します。ブリアント教の教皇の指示により、見聞を広める為にファーガソン王国の高等科学園へ留学生として参りました。聖職者として暮らしてきた為に、皆さんの常識に疎いことがあるかと思いますが、どうかご了承ください」

「ほぅ、義姉様の親戚筋か? 聖職者に俗物の世を学ばせるとは、教皇様の考えとはいえ理解ができませんね。何かしら特別な目的があるということでしょうか?」


 教皇の血筋であるヴァレンティの者が、わざわざ留学してくることに納得がいかないのか? アルバロンは意味深な言葉を投げかけた。それを聞いたフランチェスコは、軽く首を傾げた後に笑顔のまま応えた。


「教皇様のお考えは、私のような者には理解が及びません。なので、その質問に応えることができません」

「やはり聖職者は平然と嘘をつきますね。追及してもボロは出さないでしょうから、ここは諦めるしかありませんね」


 アルバロンがそう言うと、フランチェスコは笑顔のまま頭を下げた後に、ゆっくりと席に着いた。


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