第58話 自己紹介

 教室は静まり返ったままで、どう考えても普通の状況ではなかった。


 叔母様はそんな状況を気にすることなく、教壇の上から生徒に向かって口を開いた。


「全員揃っているな。これから教師を交えた自己紹介をしてもらうからな」

「「はい」」

「では、Sクラスの10位のエリック.コルテオから順に始めてくれ」

「はい、コルテオ侯爵家のエリックです。将来は財務局長を務めている父のように、国を支える立派な文官になりたいと思っています」


 内務局、外務局、財務局の3つは国政を任される侯爵家の中でも特に権威がある為に、三大侯爵家と呼ばれている。父と同じ道を歩めるかは次の国王に認められる必要があるけど、立派な文官を目指して頑張って欲しいところだね。


「ほぅ、Sクラスの末席程度が、己の望む職に就けると思っているのか。普通に考えればかなり厳しいと思うのだが、寝る間を惜しまず努力すれば可能かも知れないね」

「先生の言われた通り、死ぬ気で努力したいと思いますのでご指導ください」

 

 エリックが自己紹介を終えると、アルバロンがかなり辛辣な言葉を口にした。当然だけど言われた本人は、一瞬だけ苛立つ表情を見せたけど、そのことを口にせずに冷静に返答した。


 今日の自己紹介って生徒に辛辣な言葉を投げかけて、その反応を見る為のものなのかな? なんて思ってしまった。次のサンドラにも厳し言葉をかけるのかと思うと、心配になる。


「サンドラ.フォレスターと申します。レイバック辺境伯家の至宝である、リディアーヌ姫の付き人として入学しました。姫様にご用がある方は、まず私に声をかけるようお願いします」

「えっ……、付き人なのに高等科学園に入学して、さらにSクラスに在籍してるの? どれだけ優秀なんだよ」


 サンドラ……、どうして私のことをそんなに持ち上げるのよ? なんて思っていると、ソクラテス先生が付き人という立場にもかかわらず、最上位のSクラスで合格したサンドラを褒めた。エリックのように辛辣な言葉を向けられると思っていたので、意外な結果に驚いたのだった。


(まぁ、私の身の回りの世話をしながら、Sクラスで合格をしたんだもん、サンドラは本当に優秀だよね)


 サンドラの後に続く護衛の4人も、同様に褒められていた。私のように何もしないで勉強をしていた訳ではない、辺境伯領の人材は本当に優秀ということだね。ファビオが辺境伯領の領主となった時に彼等が居てくれれば、私が足を引っ張っても大丈夫だと安堵した。


※相変わらず自己評価の低いリディアーヌ、己がどれほど優秀であったのか、そのことに気づくのはまだ先のことである。


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