第56話 絡まれ体質なのかな?

 入学式の翌日からは授業が始まる。


 領地へと戻るお父様が、私達を学園まで送ってくれたのは良いんだけど、正門前で別れを惜しむあまりに思いきり抱きつかれ、さらに『ワンワン』と泣き出してしまった……。登校する生徒達の視線を集めてしまい死ぬほど恥ずかしかった。


 お父様が領地へ戻って行くのを見届けたあと、私達は教室へと足を運んでいると呼び止められる。


「レイバック辺境伯令嬢、少し時間を頂けるかな?」


 声の主は、生徒会長のパーシヴァル殿下で、面識がほとんどない彼から呼び止められたことに違和感を覚えた。とりあえず学園内ということもあり、王家が相手などと身構えずに対応することにする。


「直ぐに済むことでしたら、この場で用件をお聞き致しますよ」

「そうか、用件というのは生徒会への勧誘なんだ。直ぐの返事は求めないから、ゆっくりと考えてもらえないかな?」

「はぁ、それならお断り致します」


 生徒会への勧誘だったけど、私は軽くため息をついてから断った。だって生徒会へ勧誘するのなら、私より先にファビオに声をかけるのが筋だから。新入生で最も優秀な生徒を差し置くなんて、全くおかしな話だと思ったから。


 パーシヴァル殿下は即答されると思わなかったのか、かなり驚いた表情で『ポカーン』と口を開いていて、誰もが振り返るような『超絶イケメン』が台無しだった。それでも直ぐに我に返ると、少し早い口調で理由を聞いてきた。


「すまない。即答されるとは思わなかったんだ。理由を聞かせてくれるかな?」

「はい、今年の新入生で最も優秀な生徒は、私の婚約者であるファビオですよね?  それと生徒会は学園内の政を司る場所だと思っています。将来のことを考えると、ガウェイン殿下かファビオが適任だと思い断りました」

「そ、それは……」


 私の言っていることが正論なので、パーシヴァル殿下は答えることができないでいると、サンドラが声をかけてくる。


「姫様、このままではホームルームに遅れてしまいます。教室へ向かいましょう」

「あっ、そうだね。では生徒会の件はお断りしますので失礼します」

「あぁ、無理を言って悪かったね」


 冴えない表情で『悪かった』と言った殿下に、軽く会釈をしてから教室へ少し急いで向かうと、ホームルームに遅れることはなかった。


※登校する時間帯だった為に、多くの生徒が2人のやり取りを目撃した。生徒会に入るという名誉を断り、婚約者を推すという内助の功と、入学式で侮辱してきた第2王子の名を挙げた慈悲深さに、リディアーヌの評価が爆上がりしたのだが、本人はそのことに気づくことはなかった。


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