第52話 愚か者の声

 入学式が終わるとすぐに、これから1年間を過ごすことになるクラス分けの発表が行なわれる。クラス分けはSクラスを筆頭に、A・B・C・Dの5クラスが存在すし、各クラスに10名ずつ成績順に割り当てられてられるの。そして、最高位のSクラスから順番に発表された。


「Sクラスの担任を務めるアンジェラだ。これより私が受け持つ生徒を発表する」


ファビオ.レイバック

リディアーヌ.レイバック

フランチェスコ.ヴァレンティ

キリアム.ローソン

アンドレアス.メイソン

チェイス.オーウェン

ムーキー.ジェニングス

カルビン.ランバート

サンドラ.フォレスター

エリック.コルテオ


 叔母様が担任する生徒はこの10人で、ガウェイン殿下とリリアの名前はなかった。巻き戻り前では2人ともSクラスに在籍していたけど、今回はAクラスになったということかな? 


「以上がSクラスの生徒だ。呼ばれた者は私の後について来るように」

「「はい」」


 叔母様が移動を始めたので私達も後に続こうとすると、1人の生徒が立ち上がって『おい!』と声をあげるので、移動する生徒の足が止まってしまう。声をあげたのはファーガソン王国第2王子のガウェイン殿下だった。巻き戻り前のこととはいえ、嵌められたことにより命を奪われた相手の声に、思わず前に居るファビオの手を取り握り締めた。


「このクラス分けは絶対におかしいぞ! この僕がSクラスではないのに、どうして無能な我儘娘と言われているリディアーヌがSクラスなんだ!」


 ガウェイン殿下が大声で自分がSクラスでないことと、私がSクラスであることに抗議したのだった。


「何を言っているんだ? お前の学術は全体の15位、武術は13位、魔術に至っては20位だったのだから、Sクラスに入れるはずがないだろう。まさか、王家なら馬鹿でもSクラスに入れるとでも思っていたのか? それと、レイバック辺境伯令嬢は全ての成績が2位だった。そんな辺境伯令嬢のどこが無能なのだ?」

「うるさい! 第2王子に向かって口の聞き方に気をつけろよ? 不敬罪にするぞ!」


 叔母様がガウェイン殿下の抗議に対して返答をすると、険しい表情をしながら『不敬罪』を口にしてしまった。普通なら王家の者に今のような口を利けば、確かに不敬になるかも知れないけど、対等な立場のレイバック辺境伯家は許されるのだ。叔母様はレイバック辺境伯家の者なので、殿下の言う不敬に問われることはないの。


「不敬だと? 私はアンジェラ.レイバックなのだぞ? お前の言う不敬に問われることはない。第2王子なのに私が何者かも知らなかったのか? 今のお前の発言は、王家と対等なレイバック辺境伯家への侮辱となり、大きな問題になるのだぞ?」


 叔母様がガウェイン殿下の言葉に反論したあと、鼻で笑いながら来賓席に目を向けた。そこには真っ青な顔をした国王夫妻と、無表情なお父様とお母様が並んで座っていたのだった……。


(あっ、パパとママは完全にキレてるよ)

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