第50話 王家との盟約
王都の別邸に到着すると、別邸執事長のゲイルが出迎えてくれた。
「奥方様、お嬢様、お帰りを心待ちにしておりました。高等科学園の卒業まで間、城での暮らしまでとは言えませんが、快適に過ごして頂けるように勤めます。それから……」
出迎えの言葉のあと、続けて何かを伝えようとすると表情が曇る。そのことに気づいたお母様は興味なさそうに声をかけた。
「その様子からすると王家絡みね?」
「はい、入学までに登城して欲しいとのことですが、どうされますか?」
「もちろん行かないわ」
「かしこまりました」
「本当に王家って馬鹿なのかしら? レイバック辺境伯家と対等と思ってるのなら、勘違いを正さないといけないわね」
なにか、お母様が恐ろしいことを言っているけど、レイチェルとゲイルは『ウンウン』と頷いてから口を開いた。
「アルテイシア様の言う通りです。辺境伯家が守ってやらなければファーガソン王国など、とっくの昔に滅んでいますからね」
「左様です。初代様が統治に興味がなかったから、ファーガソン家が国王になっただけだというのに、王家はお飾りの立場なのだと弁えるべきです」
この国の歴史には、そんなことは一切記されてないんだけど……、そんな重要なことをこの場で口にして良いことだったのかな? ファビオは後継者だけど、私やサンドラ達が知るには、この話の内容は荷が重過ぎると思えたの。
「ママ? 今の内容は私達の前では言わない方が良いんじゃない?」
「構わないわよ? リディの伴侶とその専属騎士になる者なら知っても問題ないわ。そろそろ王家との盟約について、教えても良い頃合いかも知れないわね」
「盟約?」
お母様が王家との盟約と口にすると、ゲイルは私とお母様の会話に、慌てた様子で割り入ってくる。
「奥方様、盟約については旦那様の口から伝えなければなりません。そのことだけはご理解ください」
「あっ、そうだったわね。このことは領地に戻った時に、ミゲールから説明させるわね」
「うん、判った」
以前にも聞いた王家との盟約というワードが出てきた。盟約の内容の一つに『王家は辺境伯家に決して強制をしない』というものがあるのは知ってるいるけど、他にも盟約があるみたい。長期休暇で領地へ戻った時に、お父様から盟約の内容を聞くということでその場の話は終わったの。
そして別邸に着いた翌日からは、制服や教科書など必要な物を全て揃えたんだけど、お母様が気合が凄まじくて呆気にとられる。だって、私の制服はサンドラと同じデザインなのに、使用している素材の違いから全くの別物に見える。綿ではなく天蚕と言われる貴重な糸で作られた豪華な制服は、光が当たると『キラキラ』と輝くのでめちゃくちゃ目立つ。こんな制服を着て登校するのかと思うと『悪目立ち』しそうで不安になるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます