第47話 2人の想いは1つ

 辺境伯領内に馬車で戻ってくると『ホッ』と落ち着くのが判った。


 賑やかな王都よりも、のどかな領地は本当に居心地が良い。改めてこの領地で暮らし続けたいと思うと、未だにファビオへ気持ちを伝えることができない、弱い自分が嫌になったの……。


 このまま『モヤモヤ』としたものを抱え続ける訳にもいかないので、お母様に相談してみることにした。私から見ても両親はとても仲睦まじいので、きっと良いアドバイスがもらえると思ったから。


 誰にも聞かれたくないので、お母様に2人きりになる時間をとってもらい、2人きりで話を始めた。


「ねぇ、ママはどうやってパパに『好き』って伝えたの?」

「それは初めて告白をした時のこと?」

「うん」

「リディはファビオに『好き』って伝えたいのかしら?」


 お母様の口からファビオの名前が出ると、顔が熱くなって答えることができずに、頷くことしかできなかった。


「ふふっ、それは誰の意見も参考にならないわよ? ただ、言えることは素直に気持ちを伝えるだけかな?」

「素直な気持ち?」

「そうよ、ファビオのことが好きなら、その想いを素直に伝えれば良いの」

「でも……」

「断られるのが怖い?」

「うん、断られたら今までの関係じゃいられなくなるでしょ?」


 そう言った瞬間、自分でも泣きそうになったのが判った。お母様もそのことに気づいたようで、優しく抱き寄せてくれた。


「ねぇ、天使のようなリディを拒む者なんてこの世に居ないわ。もっと自信を持ってファビオに気持ちを伝えれば、必ずリディの望む結果が訪れるわよ」

「うん、頑張ってみる。ママありがとう」


 お母様に相談したことで、押し寄せるような不安がなくなり、勇気が湧いてきたのが判った。


 それでも時間が経つと、再び不安が押し寄せると思い、直ぐにファビオの元へ向かって、素直な想いを伝えることにした。


 私は湯浴みのあと服を着終えると、ファビオの部屋へと向かいドアをノックする。


『コンコン』


「はい、えっ、リディ、どうしたの?」


 就寝前ということもあって、私が訪れたことに驚いていた。


「ちょっと話したいから部屋に入ってもいいかな?」

「あっ、ごめん、どうぞ」


 部屋に入ったのは良いけど、既に緊張はMAXで鼓動が異常に速くなっていた。ここまで来たんだと覚悟を決めて、私は自分の想いを伝える。


「あのね、私は、ファビオのことがずっと大好きだったの……」

「リディ……」

「私はずるいよね。辺境伯の娘がこんなことを口にしたら、断れないって判っているの。だけど……」


 想いを最後まで伝えようとすると、ファビオが『ギュッ』と私を抱きしめた。


「ずるくなんかないよ。初めて会ったあの日から、僕はリディに恋をしていたんだ。リディ以外の人を好きになるなんてありえない。リディの気持ちを知れて嬉しいよ。僕はリディアーヌを愛している」

「あぁ、ファビオ……」


 私のことを想っていてくれた。そのことが判ると感情が溢れて、言葉を発することなくファビオに抱き着くことしかできなかったの。


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