閑話 王家の事情

 レイバック辺境伯親子が王城から去ってい行くと、間を置かずにエリアスが駆け込んできた。


「お父様、リディアーヌ様って噂と全然違うじゃない!あれは絶対に女神で間違いないわよ。全力を挙げて王家に迎えるべきだわ。早くお義姉様と呼びたいわ!」


 興奮気味のエリアスが、リディアーヌのことを義姉と呼びたいなどと言ってることに驚いた。2人は面識が全くないはずなのに、どこでリディアーヌのことを知ったのかを聞いてみる。


「どうしてリディアーヌ嬢のことを知っているのだ?」

「えっ、私がリディアーヌ様を謁見の間にお通ししたのよ? その時に、少しだけお話をしたのだけど、リディアーヌ様はまさに女神様だったわ!」


 どうやらファーガソン王国を救う一端を担ったのは、我が娘エリアスだったらしい。偶然とはいえ非常に良い仕事をしてくれた。しかもリディアーヌのことを相当気に入ったことも僥倖だ。2人の兄が次期国王の座をかけてリディアーヌにアタックするのを、喜んで応援してくれるだろう。


「エリアス王女の働がなければ、王国と辺境伯の関係は最悪の結果になってましたな。それで、辺境伯令嬢は婚約者がいると言ってましたが、王家に迎えることを諦められるのですか?」


 宰相ヘイワードがリディアーヌを諦めるのかと聞いてきた。王家から婚約を打診することは無理だが、現状は婚約をしているだけであって、婚姻を結んだ訳ではないいのであれば、2人の息子達にも逆転の余地はあると判断した。


「諦めんよ。真実の愛に気づいたなんてことになれば、ミゲール達も口出しはできまい。パーシヴァルとガウェインには、後継者の条件について説明をするぞ」

「かしこまりました」


 側近やエリアス達と会話をしていると、話を割って入ってくる者が現れた。


「父上、話をする声が聞こえたのですが、私はステファニーた婚約を結ぶのでは? それが、どうしてそうなるのですか?」


 謁見の間に第1王子のパーシヴァルが入ってきた。正式な公表はしていないが、ヘイワードの娘ステファニーとの婚約がほぼ確定していたので、そのことを私とヘイワードに確認をしてきた。


「殿下、王国のことを考えれば、我が娘よりも辺境伯令嬢との婚姻こそが、最も望ましいと思われます」

「ステファニーを捨て置けと? 王国の中で辺境伯家の影響力とは、そこまで大きいということなのですか?」

「お兄様!リディアーヌ様を見れば、辺境伯家の影響力なんて関係なく、あの方を妻にしたいと思いますよ。だって女神のような方なんです」


 目を『キラキラ』と輝かせながらリディアーヌを称える妹の姿に驚くパーシヴァル。ステファニーにあれだけ懐いていたのに、掌を返すような態度をとったことで、パーシヴァルもリディアーヌの存在を意識せざるを得なかった。


「そうか、辺境伯令嬢が入学すれば接する機会があるだろうから、その時を楽しみにしてるよ。ただ、ステファニーを急に避けることはできない」

「殿下、あれは側室もしくは愛人と思っていただいて結構です。父である私でも辺境伯令嬢には、それだけの価値があると思ってます」

「実際に会ってみて、そう思える令嬢ならばその通りにさせてもらうよ」


※リディアーヌの知らぬ所で、彼女を巡る戦いに参戦する者が現れたのだった。

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