第43話 光明が差す
§ファーガソン国王視点§
高等科学園の入学試験終了した翌日、執務室で書類の確認をしていると、近衛騎士団長と宰相が慌てて入室してきた。その表情からミゲールが登城したのだと判った。
「陛下、レイバック辺境伯と夫人が登城しました。申請を踏まずに謁見を望んでるのですが、どのようにされますか?」
「馬鹿者! 直ぐに2人を通すのだ」
「か、かしこまりました」
急いで執務室を出て、レイバック辺境伯夫妻と面会をする謁見の間へ入る。そこには、明らかに機嫌の悪い2人が玉座の前に控えていた。これからは国家存亡をかけた話し合いになるのかと思うと、胃が痛くなるのだった。
「ミゲールにシア、元気そうで何よりだ。久しぶりの面会を嬉しく思うぞ」
当たり障りのないの挨拶をしたつもりだが、2人は全く反応しない。不機嫌そうな表情のままアルテイシアが口を開いた。
「はっ? お前は何を言ってるの? まずは私達の天使にしたことを謝罪するべきじゃないの? 死んでみる?」
「その通り。私の天使への謝罪と、王家が盟約違反をしたことへの抗議をしにきた。そして『次はないぞ』と最後通告をしにきたのに、お前は馬鹿なのか?」
夫人に続いて口を開いたミゲールからは、なんと最後通告という言葉が飛び出したのだ。隣のアルテイシアは『ウンウン』と頷いていた。同席していた近衛騎士団長と宰相の顔は引き攣っていたのだが、ここは謝罪をすることにした。
「そうだったな。盟約を破ったこと……」
「王が謝罪をする必要はありません! 貴様はあくまで臣下だぞ。王にそのような口を利いて許されると思っているのか? 貴様の無能な娘如きが、どうなろうと知ったことではない!」
儂が謝罪を口にしようとすると、近衛騎士団長のデュヴァルトは、剣を抜きながらミゲールに向けて言い放ったのだ。
『ズンッ!』
謁見の間に、凄まじいまでのプレッシャーが走る。
「デュヴァルト! 待てっ!」
儂はデュヴァルトに声をかけたがすでに手遅れで、ミゲールの手刀によって剣を持った右腕は切断されていた。
『シュンッ!』
「ぐわぁああああ!」
デュヴァルトは腕を切り落とされた痛みで悶え苦しんでいると、鬼神のような表情をしたミゲールが儂に問いかけた。
「これが王家の返事なのだな?」
「いや、違うっ!」
「何が違うのか判らないわ。たった今、私達に剣を向けたことが答えでしょ?」
「違う!儂の意思ではない!」
「はあっ? お前の家臣でしょ? きちんと統制できないのなら、今直ぐ王なんか辞めて死ねば良いのよ」
アルテイシアは完全にキレていて、ファーガソン王国とレイバック辺境伯家との関係は完全に終わり、国は滅ぶのだと思ったその時、1人の少女が怒り狂う2人に声をかけたのだった。
「お父様、お母様!」
「「リディ!?」」
「もう少し冷静に話そうね? 王家と辺境伯家が並び立ってこそのファーガソン王国なのよ? だから冷静になって話し合って欲しいの」
無能な我儘娘と言われていた辺境伯令嬢が現れて、終焉を迎えかけていた王国に一筋の光明が差したのだった。
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