第42話 リディアーヌの我儘
高等科学園での3日間にわたる入学試験を終えて、後は帰領するだけだと思っていた。それが、お父様が夕食の時に翌日の予定を口にしたの。
「帰領する前に登城する。リディを怖がらせたことへの抗議と『次はないぞ』と王に最終通告をする」
お父様は国王様に対して抗議と最後通告をすると言いだした。ファーガソン王国では王家に次ぐ辺境伯家とはいえ、抗議だけならギリギリ許されるとしても、最後通告は流石に不味いと思った。私のことを大事に思ってくれているのは承知しているけど、そのことで国と揉めることは避けたい。だって、争いが起これば大切な領民達を失うかも知れないから。お父様だけで行かせることに不安を感じていると、もっと危険な人物が口を開いた。
「では、私も一緒に行くわよ。少しは文句を言っておきたいもの。留守はアンジーに任せるわよ?」
「あぁ、任せて欲しい」
なんと、お父様よりも危険なお母様も一緒に行くと言いだしたのだ。私が絡むと一番過激なので、もう不安しかない……。
(どうか戦争になりませんように……)
翌日、両親が登城するのを見送ってからは、不安な思い抱えながら待つことに……
(はぁ……、不安だ……)
王家と揉める未来しか視えない。私は無理を承知で、叔母様にあるお願いをすることにした。
「叔母様、王城へ連れて行って欲しいの」
「「!?」」
「リディ、それはお義父様とお義母様の意に背くことになるよ?」
ファビオは驚きながら私に声をかけたけど、護衛の4人は驚きのあまり言葉を失っていた。私が王城へ行くということは、両親の意に背くことになるからだ。
意に背くことは判っているけど、ファビオの将来を考えると1人の領民も失いたくないの。私に甘い両親から厳しい罰を与えられる可能性は低いと思うし、できる限りのことをして領民を守りたい。
「私は領民を守りたいの。叔母様以外に頼れる者がいないから、どうか、このリディアーヌの我儘を聞いてください」
「本当にリディは慈悲深い天使だね。判った。私が責任を持って王城の謁見の間へ届けてみせよう」
「叔母様、心から感謝します」
叔母様が私の頼みを聞いてくれたので、直ぐに王城へ向かう為に出かける準備をすると、ファビオと護衛である4人は席を立ち上がった。ただ、5人を連れて行こうとは思っていない。
「ファビオ達は残っていて欲しいの。私には甘い2人だけど、ファビオ達はパパとママに怒られちゃうでしょ?」
「リディだけに任せるわけには!」
レイバック辺境伯家の後継者になることは間違いないと思うけど、もしもの事態だけは避けたいの。領民も大事だけど、私の最優先はあくまでファビオの幸せだから、リスクは絶対に背負わせない!
「ファビオ、今回だけは私の我儘を聞いて欲しいの。高等科学園に入学したらファビオの婚約者として我儘は言わないから、今回だけは許してね」
「リディ……、うん、判ったよ」
私の我儘を押し通す結果になり、ファビオに『嫌われたかも知れない』と思いながらも、私は叔母様と王城へ向かったの。
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