第41話 お父様がやって来た

 私が個室でみんなが戻るのを待っていると、突然ドアが開いた。


『バァーン!』


 ファビオ達ならドアをノックしてから開けるはず。上位貴族の個室と判りながら、このような無作法なドアの開け方に、一瞬王家の関係者かと思ったけど、部屋の中へと入ってきた者の顔を見て、王都に居るはずのない人物なので驚いた。


「えっ? パパがどうしてここに?」


 そう、辺境伯領に居るはずのお父様が目の前に現れたのだった。少し遅れてお母様と叔母様も部屋へ入ってくると、お母様は怒った表情をしていた。


「リディ、私の天使! 怖い思いをさせてしまったね。パパが来たからもう大丈夫だからね」

「ミゲール! 急にドアを開けるからリディが驚いてるじゃない!」

「ははっ、ごめんごめん!」

「リディ驚いたわよね? パパったらリディのことが心配で、早馬を走らせて王都まで来ちゃったのよ? ほんと、どうかしてると思わない?」


 呆れ顔のお母様、隣の叔母様は少し複雑な表情をしていたけど、領主として忙しいにもかかわらず、私のことを心配してくれたお父様に、感謝の想いが溢れた。


「パパ、ありがとう。心配をかけてごめんなさい……。パパの顔を見たら凄く安心するよ。大好き」


 感謝を伝えていると、目から涙が溢れて頬を伝った。巻き戻ったからこそ感じる両親の愛に、2人の娘であることを改めて感謝したの。


「リディ、ファビオ達の試験は午後も続くようだから、いったんパパ達と別邸へも戻ろう。アンジー、お前はここに残ってこのことを伝えるように。今回の件については後でしっかりと話すからな」

「はい……、兄上申し訳ありませんでした」


 お父様は、私と話す時には絶対に見せない厳しい表情で声を掛けると、叔母様を残して両親とともに別邸へ戻った。そして、3日間に渡った入学試験の話をしたの。


§ファーガソン王視点§

 側近からレイバック辺境伯であるミゲールが、早馬を使って王都に到着したと報告を受けた。


 直ぐに登城するのかと思ったが、娘が入学試験を受けている高等科学園へと向かったらしい。王への挨拶より愛娘を優先するほどに大事だということから、今回の件がとんでもない問題になるのだと、頭を悩ませるのだった。


 そして悩み抜いて1つのプランが浮かんだ。それは愛娘を我が国の王妃として迎えることだった。娘が未来の国母たる王妃になるのだ、きっと怒りなど吹き飛び喜ぶのではないかと思った。パーシヴァルとガウェインの2人の王子には、愛娘と婚姻した者が次期国王になると伝えば納得するだろう。これでレイバック辺境伯家との拗れそうな問題を一気に解決できるはずだ。


 最良のプランを直ぐに実行する為に、私は宰相を含めた側近へ声をかける。


「パーシヴァルとガウェインを呼べ!」

「かしこまりました」


 これでファーガソン王国最大の危機を乗り切れると安堵したのだった。


 そう、レイバック辺境伯との話し合いを行うまでは、全てが上手くいくのだと思っていたのだった……。


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