第38話 治癒の使い手達

 武術試験はフォビオを含めて全員が圧勝して幕を閉じた。私と違って相手に何もさせなかったのだから、その強さは疑うこともなく本物だ。そんな彼等がファビオに仕えてくれれば、レイバック辺境伯家は安泰だと思った。


 試験を終え正門に向かうと、引き続き叔母様が護衛を務めてくれたので、昨日のようなトラブルが起こることもなく別邸へ帰ることができた。


 夕飯もしっかりと食べて、寝付きもよく睡眠をしっかりとれたことで、3日目の魔術試験は万全の体調で迎えることができた。高等科学園に到着すると、披露する魔術によって会場が違うことを知った。私は治癒術でファビオ達は攻撃術を披露するので、会場の前で分かれることになる。


「私はあっちだから、みんなとはここまでだね。また後でね!」

「姫様を1人にするのは不安です……」


 サンドラが私を1人にすることを不安だと言うが、こればかりはどうすることもできない。


「大丈夫。試験が終われば、直ぐに食堂の個室に向かうよ。私のことが気になって悪い結果にならないようにね?」

「かしこまりました」


 サンドラは納得しきれていないようだけど、試験の開始時間が迫ってきたので、みんなと別れて治癒術の試験会場へ入っていった。そこには5人の受験生が控えていて、その中には因縁のあるリリアも席に着き、試験が始まるのを待っていた。


「おはよう。治癒の使い手は6人だけか、流石は希少魔術の白属性だね」


 魔術試験の試験官が入ってきたが、普段から聞き慣れた声に驚いて、思わず試験官の顔を見たらアルバロンだった。


「アルバロン! どうしてここに?」


 思わず声をかけると、アルバロンは苦笑いしながら私に近寄ってきて、他の受験生に聞こえないように説明をする。


「リディアーヌ様、私は奥方様の指示により学園の教師となりました。なので学園では呼び捨てにせず先生とお呼びください」

「あっ、判ったよ。アルバロン先生」


 アルバロンが魔術の教師になったなんて、お母様からは何も聞いてなかったので驚いたけど、私の属性と適性値を知るアルバロンなら、私の特殊性が露見することはないね。


「では、魔術試験を開始する。呼ばれた者は披露する魔術と適性値を言ってから実技を行うように」

「「はい」」

「セスク.ファルガン」

「はい、治癒ヒールで適性値は4です」


 アルバロンは自分の腕に傷をつけて、セスクに魔術で治癒をさせる。傷口に手を近づけて治癒ヒールを唱えると、傷口は閉じたけど傷跡は残っていた。


治癒ヒールというより微治癒ローヒールといったところか、もっと修練を積めば治癒ヒールを使えるようになるだろう」

「はい……」


 後に続いた2人も微治癒ローヒールで、適性値が4程度では治癒ヒールは難しいみたいだった。そしえ、因縁のあるリリアの順番がやってくる。


「次はリリア.ランベルト」

「はい、超治癒ハイヒールで適性値は7です」

「「すげぇ……」」


 リリアはかなり優秀なようだ。超治癒ハイヒールを披露すると伝えると、周りから驚きの声が聞こえてきた。今回の私はリリアに嫉妬することもないし、ガウェイン殿下が彼女を選んでも全く動じることはない。それは破滅ENDを迎えることになるからね。


 そして、全員が注目するなかリリアの超治癒ハイヒールが披露された。

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