閑話 それぞれの想い

§ガウェイン視点§

 ファーガソン王国は世襲制ではあるが、長子が王になる訳ではない。国王より王に相応しいと指名された者が、次期国王となるのだ。


 僕のライバルは兄、妹、弟の3人で、最大のライバルは第一王子である兄パーシヴァルだ。頭脳明晰で武術と魔術も一流と、非の打ち所がない完璧な兄だ。


 ハッキリ言えば、僕では兄を越えることは無理だろう。だが、有能な伴侶を得れば逆転の可能性があるはずだと思っている。その為にも高等科学園では、癒しの魔術を発動できる白属性の使い手を探す。ただ、魔術が使えるだけではなく、王妃になるのだから美しさも必要だ。事前に受験する令嬢の全てを調べて候補は見つけた。彼女は白属性と水属性のダブルで、適性値は7という素晴らしい才能の持ち主であることを確認した。その者を僕の婚約者にすることで、劣勢な後継者争いで巻き返しを図ってみせる。


§フランチェスコ視点§

 私は、教皇と祖父の命令により、ファーガソン王国にある高等科学園へ進学することになった。


 なんでも、アルテイシア叔母様の娘リディアーヌと恋仲になり、2人をヴァレンティ聖教国へ連れ帰るという任務らしい。ハッキリ言えば迷惑極まりないことだ。聖職者を目指している私が、どうして婚約者がいる令嬢を略奪をしなければならないんだ? こんなことは神の意志に背く背信行為だ。


 ただ、アルテイシア叔母様は肖像画で見たことがあり、その美しさは神の領域にある。なので、その娘の容姿には興味がないといえば嘘になる。後は、祖父から聞いた無と光という属性がどのようなものか興味もある。


 興味本位でファーガソン王国へ渡って、略奪に関しては『無理だった』と報告をして、聖教国へ戻るつもりで進学の準備をするのだった。


§リリア視点§

 ランベルト男爵家は、親貴族である伯爵家の農業面をサポートしている為に、非常に貧しい生活を送っている。私はそんな生活から抜け出したいと思っていた。そして、そのチャンスが舞い込んできたの。


 私が初等科学園に入学した時に鑑定をすると、最も希少とされる白属性の適性があると言われた。しかも適性値は7という素晴らしいものだった。これはファーガソン王国内なら聖女に認定されるほどらしく、私の取り巻く環境が一変した。


 当然だけど、初等科学園ではモテまくった。男なんて選り取り見取りで、非常に楽しい学園生活を送れたけど、私の本番は高等科学園へ進学してからだ。初等科には伯爵家までの令息しか居なかったけど、高等科にはそれ以上の階級である、王家や侯爵家の令息達が居る。私の最大の目標は、同学年の第二王子ガウェイン様で、上手くいけば未来の王妃になる可能性がある。


 高等科学園では、必ず第二王子を私の虜にして、未来のファーガソン王国王妃になるんだと心を躍らせている。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る