第28話 王都へ向けて

 高等科学園の入学試験へ向けて、王都へ出発する日を迎えた。城には入学試験を受験する者が全員集まったの。


 私とともにに王都へ向かうのはファビオと、護衛を務めるチェイス・ムーキー・アンドレアス・カルビンに、ケントの娘で私の世話役を務めるサンドラの合計7人と、保護者としてお母様が付き添ってくれることになった。


 サンドラは、私が高等科学園に在籍してる間、学園内で身の回りの世話をする為に高等科学園を受験するの。私なんかの為に、大事な娘と離れることになるのが申し訳なく思い、そのことを出発前に伝えたの。


「ケント、私なんかの為にサンドラを付き人にさせてごめんね。サンドラも貴重な時間を私の為に使わせてごめんなさいね」


 私の素直な気持ちを伝えると、ケントとサンドラは首を横に振った。


「お嬢様、私達はレイバック辺境伯家の家臣です。そのようなお気遣いは不要です」

「姫様、滅相もございません。姫様のお世話をできることを、私にとっては大変光栄なことで、心より嬉しく思ってます」

「ありがとう。心より感謝するわね」

「「身にあまるお言葉です」」


 ケント親子に声をかけた後は、護衛を勤める4人にも苦労をかけると伝える。


「私は自分を守れないから、4人のことを頼りにしてるからよろしくね」

「「身にあまる光栄です。姫様が安心して学べるように尽力します」」

「うん、よろしく頼むわね。あと気になるんだけど、私は王家じゃないから姫と呼ばれることに違和感を感じるんだけど……」


 サンドラやアンドレアス達から『姫』と呼ばれることに違和感を感じた。だって、私は王家ではなく辺境伯家の令嬢だから。そのことをみんなに告げると『クスクス』と笑いが起こり、お母様が姫と呼ばれる理由を教えてくれた。


「リディ、レイバック辺境伯家は、王家以外で唯一城を持つことを許されているの。そんなレイバック辺境伯家の娘なんだから、姫と呼ばれるのは当然なのよ」

「えっ、そうなの? でも高等科学園では名前で呼んで欲しいかな? たって姫なんて言われるのは流石に恥ずかしいもん」


 姫なんて恥ずかしいと伝えると、5人は声を揃えて返事をする。


「「敬愛を込め姫様と呼びます!」」

「あぅ……、それなら、ファビオのことは若様って呼ぶのよね?」


 5人の返事を聞いて、辺境伯家の後継者であるファビオのことは若様とでも呼ぶのかと聞くと、お母様は笑顔を見せながら首を横に振って応えたの。


「その敬称で呼ばれるのは実子だけなのよ。ママも姫と呼ばれていたけど、婚姻すれば呼ばれなくなるわ」

「むぅ、私はママみたいに姫っぽくないのに…ろ」


 私が口を尖らせていると、お母様は私の肩を『ポン』と叩いて声をかけた。


「さぁ、そろそろ出発するからパパに挨拶をしなさい」

「はい、パパ行ってくるね」

「リディと離れるのは寂しいよ……」


 私がお父様に挨拶をすると、別れが惜しいのか長い長い抱擁を経てから城を出発したのだった。

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