第20話 お披露目会①
レイバック辺境伯領では、冬になると領地内で12歳となった貴族子女達のお披露目会が行なわれる。領地内には親貴族であるレイバック辺境伯家の下にオーウェン、ジェニングス、メイソン、ランバートという四男爵家が控えているの。今年は私とファビオ以外にも4人の子息が12歳を迎えて、合計6人のお披露目会がレイバック城で行なわれるの。
話題の中心はなんと言っても私が参加すること、4歳以降は完全に人前に出ていないからなの。私の容姿については四男爵家の者ですら知らない。私がお披露目会に参加すると伝えられると、例年以上に注目されるお披露目会になったの。
そして、お披露目会の当日を迎えると、私のドレスアップやメイクは、お母様の手により完璧に仕上げられ、最後に鏡の前に立って容姿を見せてもらった。
「これが私なの?」
お母様に仕上げられた私は、物語のお姫様のような姿だったの。思わず別人ではないのかとお母様に確認した。
「ふふっ、リディにはチークとリップ程度で十分なのよ。さぁ、パパに見せてあげましょう。きっと驚くわよ」
「うん」
ドアを開けて部屋を移動しようとすると、部屋の外で待機していたメイド達が、私の姿を見て感嘆の声があげだ。
「「わぁ~、お嬢様は本当に天使だったのですね!」」
「あ、ありがとう。今日はよろしくね」
「「はい!」」
メイド達からの褒め言葉に少し戸惑いながらも、お父様とファビオが待つ部屋へ向かい、ドアが開けられ中へと入る。
「パパ、ファビオ、どうかな?」
2人どころか、周りにいた補佐官達までが目を丸くして固まってしまっていた。なかなか感想を伝えてくれないので、ナチュラルメイクは男性ウケが悪いのかと思い、頬を膨らませながらお母様に抱き着く。
「ママ、パパもファビオも気に入らないみたいなの」
『ピキピキ』
私の言葉を聞いた瞬間、お母様の周囲から冷気が走って凍りついた。お父様達はお母様の怒りに気づくと、慌てながら揃えて口を開いた。
「あっ、違うんだよ!リディがあまりにも綺麗だから言葉を失ったんだよ!」
「そうだよ。リディ、凄く綺麗で言葉が出なかったんだよ。ごめんね」
慌てて言い訳をしながら『綺麗』だと伝えたけど、機嫌が完全に戻らないお母様が『チクリ』と言葉を言い放つ。
「その言い訳は見苦しいわね。どんな状況でもすぐに感想を伝えることができないなんて、女性に対するマナーがなってないわよ? 気をつけるように頼むわね」
「本当に済まなかった。さぁ、気を取り直して会場へ向かおう。会場へ来た者も同じように固まってしまうと思うから、そのことだけは許してやってくれ。今日のリディはそれ程までに綺麗だからね。ファビオ、君が私の天使をエスコートするんだよ」
「はい、お義父様!」
この後、私はファビオにエスコートされ、8年ぶりに人前に姿を現すことになるのだった。
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