第19話 アルバロンへの褒美
アルバロンとの授業を始めて1ヵ月が経過した。アルバロンの基礎魔術論は3日ほどで理解できたので、そこから無と光の魔術理論の構築を始めた。無属性に関しては今のところサッパリ判らないけど、光属性は2つの魔術を構築することができた。威力を自由に調整できる最速の魔術弾である
そんなある日の夕食時、目覚ましい成果を出しているアルバロンに対して、お母様は褒美を与えると伝えた。
「アルバロン、あなたの功績に褒美を与えるわ。何か希望はあるのかしら?」
「もし、許されるのならお嬢様のことを名前で呼ぶことを認めて頂きたいです」
「その褒美に関しては、私の一存では決められないわ。だって、リディの承認が必要だもの」
「!?」
ファビオの表情が険しくなった。基本的に貴族の世界では、親しい者にのみ名前で呼ぶことを認める。私のことを名前で呼ぶことを認められているのは、両親とファビオだけなのでかなり名誉なことみたい。これからも魔術で世話になるので、褒美にというのなら許しても良いと思った。
「いいわ、アルバロンにリディアーヌと呼ぶことを許します」
「ありがとうございます。その、できれば愛称で呼ぶことも認めて頂けませんか?」
「なっ、アルバロン!」
アルバロンに名で呼ぶことを許した。すると感謝の言葉の後に、愛称で呼ぶことを許して欲しいと言ってきた。ファビオの怒った声が食事室に響いくと、流石の私も調子に乗り過ぎだと思い釘を刺す。
「それを認めることは無理よ。両親であるパパとママ、私にとって特別な存在であるファビオ以外に愛称で呼ぶことは認められないわ」
「そ、そうですか、かしこまりました。では、明日の授業の準備をするので失礼します」
私の言葉を聞いたアルバロンは、うつむき力ない言葉で返事をしたあと、『トボトボ』と食事室から去っていった。ファビオは妙に嬉しそうな表情をしていたのと、パパとママは『ウンウン』と頷いていたので、私のとった行動は正しかったのね。
§ファビオ視点§
最近城にやってきたアルバロン、確かに賢人と言われるだけあって優秀な教師だ。リディが光属性の魔術を2つ覚えたので、認めてやるしかないのだが、アイツは教師としてではなく男としてリディを見ている。お義母様から褒美を与えると言われると、リディを名で呼びたいと言いだした。それは仕方ないと思ったが、その後に愛称で呼びたいと調子に乗ったのだった。
「なっ、アルバロン!」
僕が思わず怒りの声をあげると、リディも同様に怒っているようだった。
「特別な存在であるファビオ以外に愛称で呼ぶことは認められないわ」
その言葉を聞いて怒りは一気に吹き飛んだ。リディが特別な存在だと言ったことで幸せの絶頂を迎えた。
(ふふっ、僕はリディの特別か……)
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