第16話 賢人アルバロン
お母様と魔術の勉強をしていると、お父様が1人の男性を連れて部屋に入って来た。見た目は20代後半だろうか? 華奢な体型から文官っぽいので、新しく迎えた補佐官かと思ったの。
「勉強中に済まないね。リディの為に魔術のスペシャリストを見つけたんだ。彼は賢人アルバロンと言って、ファーガソン王国の頭脳と呼ばれている逸材なんだ。リディの無と光の属性を調べてもらういながら、同時に授業も見てもらおうと思ってるんだよ」
お父様が『ニコニコ』しながらアルバロンを紹介すると、彼は無表情なまま口を開いた。
「アルバロンだ。レイバック辺境伯の命によりやって来たが、本当に無と光なんて属性があるか鑑定をさせてもらう。それでリディというのはどちらかな?」
お父様が紹介した後に、アルバロンは無表情なままで名前だけを伝えた後に、私の名前を敬称で口にすると、お母様の表情が一変して機嫌が悪くなった。
「私の天子を敬称で呼ぶことを許してないわよ? 賢人だからそのような態度を取ることを、この私が許すとでも思っているのかしら?」
お母様が言葉を発すると、周囲に冷気が漂い始める。アルバロンは自分の対応が不味かったと気づいて『サーッ』と血の気が引いて顔が青ざめる。このままではただでは済まないと思い、私はお母様の手を握って落ち着かせる。
「ママ、アルバロン様は悪気はなかったと思うの。賢人という忙しい身なのに、城に来てくださったことに感謝しないと」
「まぁ、なんて尊いのかしら。リディの言った通りね。でも、初対面の令嬢に対して愛称で呼ぶのは無礼なのよ?」
私の言葉で落ち着きを取り戻したけど、愛称を口にしたことには釘をさしたの。
「誠に申し訳ありませんでした。レイバック辺境伯令嬢の鑑定をさせて頂きたい」
アルバロンはすぐに謝罪をしてから、改めて鑑定をしたいと伝え直した。隣に居たファビオも不快な表情をしていたけど、私が笑顔で首を横にすると機嫌を直してくれたので、アルバロンに返事をして鑑定を頼んだの。
「私はレイバック辺境伯家の長女リディアーヌです。我が領地までのご足労に感謝致します。どうぞ鑑定をなさってください」
「かしこまりました」
アルバロンは私の頭に触れる前にお母様に目線を向ける。頷いたのを確認してから緊張しながら頭に手を乗せる。どのように能力が見えるのかは判らないけど、鑑定を始めるとアルバロンの表情が徐々に変わっていくことが判った。
「本当に属性は無と光ですが、この適性値は初めて見る数値です。適性値は1~9だと思っていましたが、その上があるとは……」
「リディの適性値は1ではないのか?」
アルバロンの言葉を聞いたお父様は、席を立って私の適性値を確認する。
「はい、お嬢様の適性値は11です。1なんて鑑定したのは誰なのですか? その者の能力を疑いますね。お嬢様は紛れもない魔術の天才です」
適性値が1で無能だと思っていたけど、実は適性値11で魔術の天才とか言われたの。天才なんて言われても、なんの実感も湧かなかった。だって、使える魔術が判らないんだもん……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます