第17話 旅の終わり

 アルバロンの言葉を聞いても『ピン』と来なかった。使い方の判らない魔術の適性値が高くても、全く意味がないんだもん。


「適性値が高くても、使えない魔術であれば適性値が1なのと変わらないわ」


 私が率直な思いを口にすると、アルバロンは柔らかな笑顔を見せながら応えた。


「その為に私が呼ばれたのです。最初に話を聞いた時は半信半疑でしたが、レイバック辺境伯令嬢を鑑定して納得しました。私の知識の全てをあなたの為に捧げます」


 最初の無関心な人という印象から、礼儀正しい振る舞いになったのは、お母様の怒りに触れたからなのだろうけど、そのギャップに戸惑いながら返事をする。


「えっと、よろしく頼むわね」

「はい、私は辺境伯様から渡された資料に目を通しますので、これで失礼致します」


 お父様とアルバロンが部屋を後にすると、お母様は私に近寄って『ギュッ』と抱きしめてきた。突然のことなので少し驚いたけど、私もお母様の体に手を回した。


「良かった……。ママが適性値を低く生んだことで、リディに辛い思いをさせてたと思っていたから……」


 今まで口にはしなかったけど、お母様は私の魔術適性のことでずっと思い悩んでいたみたい。


「ママ、私は今でも適性値なんて1でも構わないと思ってるの。何もできない無能な私でもママは愛してくれるから、大好きなママとパパにファビオが居てくれれば、私はそれだけで十分なんだもの」

「リディ! もし世界がリディを敵だと言ってきたら、ママがそんな世界は滅ぼしてやるわ」

「うん、あ義母様の言う通りだ。僕の世界はリディが中心だからね」

「2人ともありがとう。でも大袈裟だよ?」


 素晴らしい家族に支えられているのに、どうして巻き戻り前はあんな風になったのかな? なんて思うのだった。


§アルバロン視点§

 世界中を放浪して楽しんでいると、レイバック辺境伯から呼び寄せられた。


 なんでも『無と光の属性を持つ娘が居る』なんて馬鹿げたことを言ってきた。なにしろレイバック辺境伯の令嬢といえば『無能な我儘娘』で有名だからな。なので、親馬鹿が何か言ってるだけだと思っていた。しかし、ファーガソン王国でも王家に次ぐ有力貴族の命令を、簡単に無視する訳にはいかなかったので、鑑定だけしてすぐに去るつもりだった。


 半ば強制的に連れてこられたので、無礼な態度をとってしまい奥方様の怒りに触れ、絶体絶命のピンチになった時、天使のような少女リディアーヌ様が奥方様の怒りを鎮めてくれた。


 容姿もさることながら所作まで完璧なリディアーヌ様を見て、どこが『無能な我儘娘』なのか全く理解できなかった。そして、鑑定をすると本当に無と光の2属性で、適性値はなんと11だった。


 賢人と言われ知らない物を求めて世界中を放浪する旅は、リディアーヌ様との出会いにより終わりを告げたのだった。


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