閑話 リディの変化

 ファビオが悩みを打ち明けてから2年の月日が経過して、私達は12歳となった。


 あの日を境に、ファビオはさらに研鑽を積んで神童と呼ばれる存在になった。お父様と領地の視察に同行するようになり、領民から【若様】と呼ばれるようになっていた。レイバック辺境伯家の後継者はファビオだと、全ての人から認められたということだね。


 私の方はというと、巻き戻ってからは一度も城の外へ出ていない。ファビオが領地へ向かう時に、『一緒に行こう』と誘われても頑なに断っているの。領民からの人気は皆無な私が同行すると、友好的な雰囲気を壊しかねないから。


 今日もお父様とファビオは、領地の視察へ向かっている。城に残った私は、お母様と暑さ凌ぎの水浴びをしていた。冷たい水で体を冷やしているとお母様が話しかけてきたの。


「ファビオとは仲良くしてるの?」

「うん、レイバック辺境伯家の後継者に決まったその時は、私を伴侶にしたいと言ってくれたの」

「まぁ、そうなればリディはずっとママと一緒に暮らせるのね」

「でも、高等科学園へ通うことになれば、私なんかより優秀で綺麗な人がたくさん居ると思うの。もし、好きな人が現れたら私は身を引くつもりなの」

「リディより素敵? そんな娘がこの世に居るのかしら?」

「ははっ、たくさん居ると思うよ。私はママみたいに綺麗じゃないし、魔術も適性値が1で無能なんだもん。今は、身近な異性が私だけだから気にしてくれるんだよ」


 私がそんなことを言うと、お母様は『はぁ~』とため息をついて何かを言おうとすると、領地の視察からお父様とファビオが戻ってきた。


「あっ、パパが帰ってきたよ!お菓子を買ってくると言ってたからお迎えに行くね」


 私は薄手のシャツを身に着けると、小走りでエントラスへと迎えに行ったの。


§アルテイシア視点§

 ある日を境に、リディとファビオに変化が生じた。その変化は私にとって良い方向だったので、温かく見守ることにした。


 そんな中、リディの口から思いがけない言葉を聞いたの。


『ファビオが、レイバック辺境伯家の後継者に決まったその時は、私を伴侶にしたいと言ってくれたの』


 私とミゲールの望む言葉を聞いて舞い上がりそうになったわ。


 ただ、リディは自分に自信がないのか『好きな人が現れたら身を引くつもり』『身近な異性は私だけだから』なんて言葉を口にしていた。まぁ、ファビオはリディのことが大好きだから、他の女になんて惚れるなんてありえない。これで、私とミゲールの明るい未来は確定したと安堵し、リディの後を追って迎えに向かったの。


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