第12話 そこに天使が居た
§チェザーレ視点§
私がリディアーヌの魔術適性を鑑定すると、無と光という謎の属性という結果だった。ただ、その適性値は1という最低なもので、魔術としては全く使えないと思う。
兄である教皇がアルテイシアを連れて戻れと言うので、そのことを打診した瞬間、辺境伯から発せられた殺気により『死』の恐怖を感じた。世界最強の一角と言われる男だけあって、決して怒らせてはいけない存在だと思い知らされた。
鑑定を行ったあとは、辺境伯領内でブリリアント教の視察で忙しく、外で夕食を済ませてから辺境伯家の城へと戻った。城には素晴らしい大浴場があるので、視察で疲れた体を癒やす為に大浴場へと向かった。
すると、前方からシアと少女が手を繋いで歩いてくるのが見えた。シアと目が合うと『ハッ』と気まずそうな表情をしたのが気になり、隣にいる少女に目を向けると衝撃が走った。
(なんだ? この少女は天使なのか?)
少女はどうやらリディアーヌのようで、私の知るそれとは全く違う顔をしていた。どうやら大人びた化粧をしていたようで、素の顔は別人のように美しかった。
幼少時のアルテイシアのことはよく覚えている、それは美しい絶世の少女だったが、目の前にいるリディアーヌは、それをも遥かに凌ぐ美しさで、まさに美の天使そのものだった。
「やぁ、小さなレディさん、今は素顔なんだね。見違えてしまったよ」
「むぅ……、どうせスッピンだもん……」
褒めたつもりだったのだが、なぜか目の前の天使はご機嫌斜めになってしまった。朝の鑑定時に断わられはしたが、アルテイシアとリディアーヌの2人を、どうあっても聖教国へ迎えたいと思った。当然そんなことは言える訳がない。もし、その言葉を口にすると……、私は確実に辺境伯に殺されるからだ。
今回は、聖教国へ連れて帰るのは絶対に無理だが、リディアーヌが聖教国へ嫁いでくるとなれば話は別になるはず。アルテイシアと2人は無理でも、この天使だけなら聖教国へ迎えるという未来の可能性はあると思った。
(帰国したら、早急に教皇と相談しなければならんな。年齢のことを考えると私の孫あたりが適任だな)
なんてことを考えていると、アルテイシアが怪しい者を見るようた目で話しかけてきた。
「叔父様? 湯冷めするから私達は失礼するわね」
「あっ、あぁ、おやすみ」
私は明日には帰国する。辺境伯の怒りを買って殺されることなく、リディアーヌを聖教国へ迎える為に、色々と手回しをする必要があると思考を巡らせるのだった。
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