第6話 初授業

 私が後継者教育に同席することになると、お父様は執事を呼んで指示をだす。


「グウェイン、話を聞いていたな? リディが同席するので領地のことは私が教える。教師の派遣は断るように」

「かしこまりました」

「待ちなさい!基礎の計算とマナーは私が教えるわ。そちらの教師も断ってね」

「か、かしこまりました」


 領地の学校から教師を招く予定だったのに、お父様が領地学を教えると伝える。続いてお母様も計算とマナーを教えると言いだした。


 基礎から始めるので、最初は両親の授業でも問題はないと思うけど、いずれは専門の教師から学べるようにして欲しいかな? 


 まぁ、両親が授業をするのなら、ファビオとコミュニケーションをとる機会が増えるので、それはとても良いことだと思う。そして優秀なファビオのことを、必ず気にいるはず。隣にいる無能な私が居るから、ファビオの天才っぷりは更に際立つことになるから。


 本当なら朝食の後から勉強を始める予定だっけど、私が同席することになったので、部屋と教材の準備が必要となり、お昼から勉強を始めることになったの。


 そして、昼食が終わるといよいよ勉強が始まる。午後の前半はお父様が領地の地理について教えてくれた。


「じゃあ、レイバック辺境伯領のことを学ぼうか、ファーガソン王国のどの位置に辺境伯領があるかは知ってるいるかい?」

「はい、王国の最北端にあり、グラディス王国南側の国境に面しています」

「そう、領地北西部の殆どがグラディス王国の国境に面していて、いつ戦争が起こってもおかしくない危険地帯レッドゾーンだ」


 基礎程度のことなら知っていたけど、ここは無知なフリをしてファビオの株を上げることにしておいた。授業が終わるとお父様はファビオを褒めていたので、私の作戦は成功だったみたいね。


 領地学の勉強が終わったので休憩を取ろうとすると、ファビオは席に着いたまま動こうとしなかったので、一緒に休憩を取ろうとサロンへ誘誘ってみる。


「ファビオ、サロンへ行って一緒に休憩をするわよ」

「あっ、リディアーヌ様とご一緒なんて、畏れおおいです」


 我が家にやってきてまだ2日、まだまだ慣れずに遠慮をしてるみたい。1日も早く慣れて欲しいので、少し拗ね気味に頬を膨らませながら声をかけ直してみる。


「もぅ、私は姉弟なのよ? ファビオがここで休憩を取るのなら、私もここで休憩をするわ」

「わっ、判りました。ご一緒します」


 少し強引だったけど、サロンへファビオと一緒に向かうと、お母様が心配そうに声をかけてきた。


「リディ!遅いから心配したわよ? 疲れていない? 大丈夫なの?」

「うん、大丈夫だよ。ファビオがサロンへなかなか来てくれないから、少し遅くなっただけだよ」


 少し頬を膨らませながら応えると、ファビオは申しわけなさそうな顔をしていたので、『クスッ』と笑いながら優しく声をかけた。


「私はね、ファビオと早く仲良くなりたいのよ? その為には一緒に過ごす時間が長い方が良いでしょ? 私の我儘を聞いてくれると嬉しいな」

「はい、僕の為に気を遣って頂きありがとうございます。リディアーヌ姉様!」


 まだまだ言葉遣いは硬いけど、『姉』というワードが出たことに満足したの。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る