第5話 巻き戻りでは努力する
ファビオを迎えた翌日、直ぐに後継者教育が始まるのは理解していたけど、その内容を知って驚いた。
レイバック辺境伯家の後継者となる為の予定がビッシリと組まれていたの。私がそのことを知ったのは朝食の時で、数学に語学の基礎的な勉強と、領地の地理や他国の情勢など辺境伯に必要な知識。男爵家とは違う最上位貴族としてのマナーを学ぶといったものだった。朝起きてから寝るまでの間は、食事と少しの休憩時間以外はほとんど勉強漬けとなり、プライベートを楽しむ時間なんて全くなかったの。
私が無能なばかりに、ファビオはこれ程の過密スケジュールで頑張っていたのね。それなのに私は……、そんなファビオの優秀さに嫉妬してキツく当たっていた。
(私は最低だ……。ファビオ、本当にごめんなさい。今回はあなた一人に全てを背負わせたりはしないわ)
今回の巻き戻りの人生では、ファビオの人生だけは幸せであって欲しい。たった一人で厳しい毎日を過ごすのではなく、私がファビオに寄り添うことで、過密スケジュールを回避できるかも知れないと思い、両親にファビオと一緒に学びたいと伝えることにした。
ファビオは立派な後継者になるだけではなく、私なんかより素敵な女性と出会い結ばれ、幸福な未来を歩むことを手助けしたいの。
(それが、巻き戻った私にできるファビオへの贖罪なんだから……)
私の必殺『天使のスマイル』と『天使のおねだり』を使った。これをすればどんなお願いでも叶えてくれるの。
「パパ、ママ、私もファビオと勉強をしてみたいの。邪魔はしないから同席を許して欲しいの。ダメ?」
「「!?」」
これまで勉強になんて興味を示さなかった私の言葉に、両親は驚きと尊いまでの天使っぷりに言葉が出なかった。周りのメイド達やファビオまで驚いて、時間が止まったかのようだ。
私は勉強もせずに、我儘し放題だったことは理解してるけど、ここまで驚くことなのかと思いながら、もう一度聞いてみる。
「ねぇ、私も勉強をしたいの。同席を許してくれるの?」
「はっ、リディがしたいことを止めたりしないわ。ねぇ、ミゲールそうよね?」
「も、勿論だよ。リディのやりたいことをすれば良いよ」
「パパ、ママ、ありがとう!」
驚きの表情をしたままだったけど、私の同席を認めてくれたので、感謝の言葉を伝えてから2人の元に歩み寄り、それぞれの頬にキスをしたら凄く喜んでくれたの。
そう、これからの私はこっそりと努力するのではなく、ファビオと一緒に堂々と努力をすることとなったの。
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