閑話 最良の人材

§アルテイシア視点§

 いつも通りに、リディアーヌとティータイ厶を楽しんでいると、とても真剣な表情で話しかけてきたの。

 

「ねぇ、ママ。私では辺境伯領を統治できないと思うの」


 なんと、辺境伯家の後継の話を始めたのだった。私の天使はこんなにも幼いのに、レイバック辺境伯家のことを考えていたのね。なんて尊いのかしら! すぐに『気にする必要ない』と伝えたけど、自分が継ぐことで武の名門レイバック辺境伯家の名を汚したくないと言う。さらに、自分が辺境伯家を継げなかったとしても、私と一緒に居るだけで良いなんてことを口にしたの。私の天使はなんて尊いのかしら!


 そんなリディアーヌの言葉を聞いて、2つの案を1つに纏める最良の案を思いついたの。


 リディアーヌとの至福のティータイムを終えると、ミゲールの居る執務室へと急いで向かう。補佐官と仕事の話をしていたようだけど、そんなことはどうでも良いの。リディアーヌ以上に大事な案件なんて、私たちには無いのだから。私がノックもせずに部屋に入ると、ミゲールは少し驚いた表情を見せたけど、そんなことは一切気にせずに口を開く。


「ミゲール、リディのことで話があるの」

「!? ケント、下がってくれ。何よりも最優先にしなければならない案件のようだ」

「はい、かしこまりました」


 補佐官が退室して、2人きりになったところて、リディアーヌと話し合った内容を伝えると、ミゲールは笑みを見せながら頷いた。どうやら、私と同じ考えが頭に浮かんだのだと理解した。


「よし、すぐに養子の候補者を探そう。リディに釣り合う容姿をした文武両道の令息は、私が責任を持って探し出すよ」

「頼むわよ。その子をレイバック辺境伯家の後継者にして、リディと婚姻させることができれば、私たちの元を離れることなく、ずっと一緒に暮らせるのよ! あぁ、夢のようだわ」

「その通りだね。リディはいずれ学園に通うことになる。そうなれば王家から婚姻の話を持ちかけられるだろう。もし王妃になんてなれば、リディと好きな時に会えないからね。そんなことは絶対に耐えられないよ」

「そうよ。リディと離れるなんて、私には絶対に無理だもの。これはレイバック辺境伯家の最優先事項として頼むわよ?」


 武術以外は少し頼りないところがあるけど、リディアーヌが絡むと顔つきが変わる。そして、右手を胸に当てて力強い返事をしたの。


「リディに相応しい令息を見つけてみせるよ。シアは受け入れ体制を整えてくれ」

「えぇ、判ったわ」


 そして、ミゲールに話をしてから1ヵ月が経つ頃、ついに最良の人材を見つけることができたの。辺境伯領内に属する男爵家の三男で、整った顔立ちと文武ともに天才と呼ばれるファビオという令息だった。ミゲールは早急に所定の手続きをとって、レイバック辺境伯家の養子として迎えることになったの。


 あとは、リディアーヌがファビオのことを気に入れば、レイバック辺境伯家の後継者問題の解消と、リディアーヌと離れずに暮らし続けることが可能になるのよ! 本当に夢のようだわ! それにしても、巻き戻る前のリディアーヌと様子が全然違うんだけど、まさか記憶があったりするのかしら?


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