第39話 クランについて

 夜明けの一座と別れたあと、僕はダースとともに奴隷館で談笑する。


「やっぱり勇者はかっこよかったなー」


 憧れだ。


 ああいう冒険者になりたいと思った。


「ボスもそこそこかっこいいぞ?」


「そこそこってなんだよ」


「情けないことも多いからな」


 そういってダースが笑った。


「それは否定しないよ」


 自分でもよくわかってる。


 僕は情けない。


 でも、いつか勇者ドルフィンのようになりたい。


 Sランク冒険者にもなりたいし、勇者のようにクランを率いるリーダーにも憧れる。


「まあ僕はリーダーには向いてないけどね」


 自嘲気味に呟く。


 生前、僕は一度もそういう役割を任されたことがなかった。


 クラスのリーダーとかみて、いいなーって思ったことはあったけど、自分がリーダーをやれる自信はない。


「ボスもなればいいだろ?」


「え?」


「クランリーダー。あいつに憧れてんだろ?」


「……まあ。そうだけど」


「やりたきゃやればいいだろ。だってボスなんだから」


「そりゃ、なれるならね」


「だからさ、なれるって言ってんだろ? なにくよくよしてんだよ」


 なんかダースに怒られた。


 なんで怒られた?


 まあいいけど。


 クランリーダーかぁ。


 うん、一度ちゃんと考えてみよっかな。


 そんなこんなで僕はクラン設立を本気で考えてみた。


 冒険者ギルドの人に話を聞きに行ったり、勇者ドルフィンに尋ねたり。


 そして、出た結論が――。


「うん、無理だね」


 現実問題、いま僕がクランを設立することは不可能だ。


 そもそもクラン設立には条件がある。


 まとめるとこんな感じだ。


 設立の最低条件:クランリーダーがCランク以上の冒険者であること。


 設立時の最低人数:5人


 ただし、5人で設立後に5人を下回った場合でもクランの継続は可。


 その他、設立には実績と支部長の許可や他クランの推薦が必要になる場合もある。


 というのが、ざっくりした内容だ。


 他にも金銭的なことや犯罪者でないことなど、いくつか条件はあったけど、そこらへんはあまり気にしなくて良さそうだ。


 ちなみに設立者の冒険者ランクによって設立条件が異なってくる。


 要は冒険者ランクが信用となって、当然、高いランクのほうが信用度が高く、低いランクのほうが信用度が低くなる。


 設立者がSランクの場合:支部長及び本部の許可が必要なくCランククランからスタート、また本部判断によりリーダー・メンバーの実績次第でBランクスタートの可能性あり。


 設立者がAランクの場合:支部長の許可は必要なく本部の許可のみ必要、Dランククランからスタート、また本部判断によりリーダー・メンバーの実績次第でCランクスタートの可能性あり。


 設立者がBランクの場合:支部長及び本部の許可と一つ以上のクランからの推薦が必要、Eランククランからスタート、また本部判断によりリーダー・メンバーの実績次第でDランクスタートの可能性あり。


 設立者がCランクの場合:支部長及び本部の許可と2つ以上のクランからの推薦が必要(うち一つのクランはBランク以上)、Fランククランからスタート、また支部判断によりリーダー・メンバーの実績次第でEランクスタートの可能性あり


 冒険者がDランク以下の場合、設立不可。


 詳細はいったん置いといて、つまり、僕はEランクだから設立ができないということだ。


 終わった。


 まあでも、Eランクでなんの実績もない僕がクラン設立できるわけないか。


 そりゃそうだと思う。


 何にしてもとりあえず、ランクを上げるところから始める必要がある。


 目指すはCランク冒険者。


 で、ゆくゆくは自分のクラン持つことも視野に入れていきたい。


 なんだかんだ、僕はリーダーというものに憧れてるのかもしれない。


 クランリーダーってかっこいいよね。


 まあ今のままではクランなんて話、現実的じゃないし。


 ひとまず、やれることからやっていこう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る