第21話 パーティー
ヤンキー聖女と別れた後、僕は冒険者の依頼を受ける。
冒険者になって2週間が経過している。
少しは冒険者にも慣れてきたと思う。
まずは冒険者ギルドに訪問。
良い依頼がないかを探す。
「今日は微妙な依頼ばっかだな」
といってもFランクに来るような依頼なんて、そんなに期待できるものではない。
適当に街の掃除依頼を受ける。
よく依頼を出してくれるおじさんだ。
「若いの。今日もありがとな」
「いえいえどういたしまして」
正直、Fランクの依頼は雑用みたいなものだ。
いい意味でいえば便利屋。
冒険者をやってるっていう感じじゃない。
でも、これもランクを上げるために必要なんだ。
ポイント稼ぎでもある。
Fランクの依頼は意外と多い。
というのも、冒険者の街はランクの高い冒険者が多い。
そのためFランクの依頼を受ける人がほとんどいない。
依頼に困ることはない。
意外とこれだけで暮らしていけるんじゃ?
さすがに厳しいか……。
前世で言う、バイトのようなもの。
いや、バイトより稼げない。
まあでも、働いてることに意義があるんだ。
「うん。いい汗かいた。いい仕事した」
前世ではアルバイトをしたことがなかった。
生前、父親から「そんなバイト、時間の無駄だ」と言われ、バイトをさせてもらえなかった。
自分で稼ぐってのは初めてで、たとえそれがお小遣い稼ぎ程度だろうと気持ちが良かった。
ちなみに仕事終わりに飲むエールはうまいらしい。
冒険者が語っていた。
僕はまだエールを飲んだことがない。
前世でもほとんどビールを飲まなかった。
なぜあれが美味しいのか理解できない。
ただ苦いだけだ。
でも、エールに憧れる。
ちゃんと仕事やりきったあとに初めてエールを飲んでみよう。
それまではエールを我慢しよう。
そのためにも、はやくランクを上げる必要がある。
「Eランクに上がりたいな……」
討伐依頼を受けたい。
魔物討伐してみたい!
だってそうじゃなきゃ冒険者って言えないし。
僕は受けられないけど、奴隷たちは受けられている。
僕は受けられないけど……。
僕以外の奴隷はみんな魔物の討伐依頼を経験している。
僕よりも年下の奴隷もいるのに……。
ああ、なんで僕だけFランクなんだろう。
やばい、もう我慢できない。
「あー! 僕だってEランク依頼受けたい!」
「どうしたんだ、ボス」
ダースがひょこっと顔をだしてきた。
「いやさ。僕だけFランクってさ、なんかあれだよね。魔物倒したことない冒険者ってなんか微妙だよね」
「はやくランク上げればいいだろ」
それができれば苦労しないんだよ。
はあ……。
こうなったら仕方ない。
禁じ手を使おう。
ほんとは情けなくてやりたくないけど、背に腹は代えられない。
「ねえ、ダース。パーティー申請しない?」
僕は思い切ってダースに頼んでみることにした。
パーティーは2ランクの差までなら組みことができる。
そしてパーティーランクは平均値が取られる。
DランクとFランクの平均値はEランクだ。
まあ完全に平均値で決められるわけではないらしいけど。
パーティーランクは最大でも、一番下のメンバーランクから一つ上までしかならないらしい。
つまり、Fランクの僕がいる時点でパーティーランクは最大でもEランクまで。
加えて、メンバーのこれまでの実績も踏まえて決められるらしい。
でもよっぽどのことがなければ、僕とダースとパーティーを組めば、僕でもEランクの依頼を受けることができる。
なんかちょっと卑怯な気がするけど、これしか方法がない。
「まあいいけど、なんで?」
「Eランクの依頼受けたいんだ。僕一人だと受けられなくて」
「……ボス。情けなっ」
ダースにジト目で見られる。
「そんなこと言わないでよ。わかってるんだから」
僕だって恥を忍んで頼んでるんだ。
ダースはしぶしぶと言った感じで「はあ……。ボスがいうなら」と了承してくれた。
ありがとう、ダース。
というわけで僕はダースとパーティーを組むことにした。
ついでにコハクもパーティーに加えた。
理由は、コハクに魔法を教えてもらうためだ。
実践を通して教えてもらったほうが成長も速いと思った。
コハクの時間を奪うのは申し訳ないけど、これも背に腹は代えられない。
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