第4話 決闘? 必要ないよね?
「……………………………………………………………………………………え?」
異世界も含めた俺史上最大の疑問符だった。
俺は人生観どころか世界観までひっくり返りそうになり、俺は平静を務めた。
「おい、ちょま、まて、まて、まて、ウェイトウェイト。だってあいつ五郎丸って」
「五郎丸は九州にある苗字で本名は五郎丸麗奈(ごろうまる・れいな)。五郎丸グループのお嬢様だよ?」
「でも俺らと同じ小学校」
「家の方針で小学校までは庶民的な暮らしをすることになっているんだよ。放課後はバレェとピアノとバイオリンを習っているよ?」
「嘘だ!」
俺は俺の全世界観を守るために叫んだ。
「五郎丸くんは暴力と支配を好む蛮族のはずだ! 俺はそんなこと信じない!」
「そんなこと言わないであげて! 五郎丸さん、あっくんのこと好きだったんだから!」
「!?」
衝撃の事実に俺の世界観はひっくり返った。
「あばっ、これ言っちゃダメなやつだった! 忘れて忘れて!」
敷島は必死になって両手を振った。
「だけどお願い嫌わないであげて! 五郎丸さんは毎年あっくんのためにバレンタインチョコもクリスマスカードも年賀状もお誕生会の招待状も手作りしては渡せないピュアな子なんだよ! あと今、隣のクラスにいるよ!」
「ちょっと待って! 俺まだ五郎丸くんが女子ってところで止まっているから! これ以上情報ぶちこまないでくれ!」
俺は涙目で懇願した。
脳裏には、邪悪なガキ大将である五郎丸くんが女装して俺に迫るという悪夢のような映像がリピート再生され続けていて吐きそうだ。
「ええい貴君らはふざけているのか!?」
「ふざけてねぇよ!」
俺は叫んだ。
「五郎丸がどれだけ狂暴だと思っているんだよ! 俺は乳歯だけど前歯を上下左右全部持っていかれたんだぞ!」
「それは本当に女子か?」
さしものアレクシアも、本題を忘れて青ざめた。
「とにかく!」
敷島が声を強めて、みんなの注目を集めた。
「この話はいったん終わり。真昼お姉ちゃん、決めること、あるんだよね」
「あ、そうだった。ありがとう里桜ちゃん♪ じゃあみんな、席について♪」
真昼姉が笑顔でみんなに座るよう促すと、女子たちは真相が気になる様子ながら、なんとか着席してくれた。
アレクシアも、不機嫌そうだが席に着いた。
「じゃあ、これからみんなにはクラス代表を決めてもらうね」
俺の隣で、真昼姉は優しい声音でみんなに語り掛ける。
「クラス代表は学級委員みたいなものだよ。学園行事の会議に参加したり、挨拶をしたり、仕事は色々あるけど、この学園で一番重要なのは、知っているかな?」
真昼姉は声をひそめて、意味深な眼差しで教室を見渡した。
「それは、クラス同士のもめ事を決闘で決めること! この学園は決闘文化。校則や話し合いでどうしても決着がつかない時は決闘で決める。そして学園祭で出し物を出す場所とか、行事の順番とか、クラス同士の決闘はクラス代表同士で行うの。明日のクラス交流戦も、クラス代表のお仕事だよ」
「じゃ、一番強い人がならないと」
誰かが言うと、他のみんなも続いた。
「せっかくの行事で我慢したくないもんね」
「このクラスで一番強い人って誰だろ?」
その言葉に、アレクシアが自分の席で自身ありげに胸を張った。
「せんせー、この教室で一番強い人って誰ですか?」
生徒たちからの質問に、真昼姉はくるりと振り返った。
「それはもちろん♪」
そして俺に抱き着いてきた。
「弟ちゃんが一番だよぉ♪ ちゅー♪」
真昼姉のくちびるが俺の頬に吸い付いて、女子たちはみんな苦笑した。
「おい姉さん、人前でやめてくれ」
「え、つまり、人前じゃなかったらしていいんだね?」
「やめろい」
赤ちゃんの頃から続く習慣に、俺も苦笑いを作った。
ちょっと嬉しいのは内緒だ。真昼姉を調子づかせる。
「ていうか俺が一番強いわけないだろ。だって俺、ブレイルに乗ったことないんだから」
俺の発言に、教室の空気が変わった。
「へ……朝俊君、ブレイル、乗った事、ない、の?」
「おう、ないぞ?」
「ふざけないでください!」
席から立ち上がり、アレクシアが怒気に満ちた表情で真昼姉と向き合った。
「ブレイルに乗ったこともない男がこの教室最強? バカにするのはたいがいにしていただきたい! そもそも、何故その男がここに? ここは女子学園では?」
「弟ちゃんは私の助手でみんなのコーチだよ」
「ブレイルに乗ったことも無い素人がコーチ? 東雲女史の勇名は聞き及んでおります。ですがまさかこんなにも盲目なブラコンだったとは。失礼を承知で言わせていただきますが、とんだ期待外れですな!」
「あら? でも弟ちゃんは本当に最強なんだよ?」
「なら、その男と決闘させていただきたい! 私とその男、どちらが強いか勝負しましょう!」
「え、やだ」
騎士のように勇ましい声音を、だけど俺はけんもほろろに断った。
教室に、微妙な空気が流れる。
「……っ……ふっ、臆したか?」
「いや、臆するとかじゃなくて、だから俺、生徒じゃないし。クラス代表はアレクシアがやればいいんじゃないかな? 公爵家なら英才教育?みたいなの受けているんだろうし」
「だが、この学園には決闘文化があるだろう!?」
「何かを決めるための決闘だろ? 何を決めるんだ?」
「それは……」
アレクシアは言葉に詰まるも、拳を落としどころを見失ったように、消化不良が顔に出ている。
「じゃあ、他に立候補者がいなかったらクラス代表はアレクシアってことで、あ、敷島はどうだ?」
「ふゃっ!?」
俺に水を向けられると、敷島は全力で手を振り否定した。
「いやいやいや、しきしまはそんな、全然、大したことないし!」
「そりゃ残念」
アレクシアともめ事が起きても困るので、俺はすぐに引き下がった。
「うん、じゃあこれでクラス代表も決まったし、じゃあみんな、入学式が終わったばかりだけど、さっそく、ブレイルを体験するために校庭に行くよ。初めての人がほとんどから、楽しみでしょ?」
姉さんが笑顔をはじけさせると、教室の空気が一変。
女子たちはもろ手を挙げて喜んだ。
●異世界帰りで中学浪人生の俺、パワードスーツ女子高でコーチ無双します 鏡銀鉢 @kagamiginpachi
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