第5話 衝動的な行動
ある日突然、機会が廻って来た。両親が結婚記念日だから旅行だと言って、二人で二泊三日の旅に出た。その日は雷が鳴り、雨が激しく降っていた。そんな日に外に出るのは怖かったが、恋心が勝った。
薫くんに電話してみて留守電だったが、思い切って行ってみることにした。薫くんは子役から活動していたから芸歴が長かったので、高校生なのにマンションで一人暮らしだった。私はボストンバックに一日分の着替えを詰めて出かけた。
電車に乗って、一時間ほど行ったところ、新宿に薫は住んでいる。駅から少し離れたところにマンションがあったが、傘を差していたのに服はビショビショだ。私は雨に濡れて冷え切った身体を抱きしめて、玄関に佇んだ。
「ピンポーン、ピンポーン」三回続けて玄関のベルを鳴らした。すると、しばらくして眠そうに目を擦りながら、パジャマ姿の薫くんが出てきた。とっさに、私は薫くんに抱きついた。すると、「冷たい。ちょっと待って」と言って、ぐっと押しのけられてしまう。
私は恨めしく思い、上目がちに薫くんを見た。薫くんは「どうしたの、こんな時間に?まあ、中に入って」と言ってそっけない様子だ。そして、コーヒーを入れるからと、キッチンに入っていった。
その間に着替えることにして、一声かけてバスルームで着替えた、着替えたら少しほっとして、薫がくんキッチンから出てくるのを、ソファーに座って待っていた。部屋を見回すと綺麗に片付いていて、まるでモデルルームみたいだと思った。
薫くんはキッチンから出てきて、一緒に座ってコーヒーを飲んだ。もう一度、薫くんは私に尋ねた。「びっくりしたよ。突然で。今日はどうしたの?」私は、こんなに恋心を募らせて雨の中をびしょ濡れになって来たのにと、薫くんの落ち着きようが恨めしかった。
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